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人理を守れ、エミヤさん!
敗将、枯れた赤薔薇
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ルで森から出る。足が重くなる。
 あと八メートル。歩行が遅くなる。
 あと、一メートル。立ち止まって、深呼吸する。
 森から出た。日差しが俺達を照らし出す。嫌に熱いが季節は夏なのだろうか。
 俺は更に進み、額から脂汗が溢れてくるのを手の甲で拭う。

 ゆっくりと、振り返った。

 ――そして俺は、この特異点での戦いが、決して一筋縄でいくものではないと確信した。させられた。

「……召喚サークルの設置を確認しました。先輩、いつでも英霊召喚は可能です」

 固い声で、マシュが報告してきた。
 俺はそれに頷く。召喚サークルが置かれ、カルデアと繋がると、すぐさまドゥン・スタリオン号とラムレイ二号が送られてくる。
 そして、ロマニの声が届けられた。

『やあ、今のところは順調みたいで何よりだ。何か変わりはないかな?』
「……」
『……何かあったみたいだね。どうしたんだい?』
「……ロマニ。南東、ローマ帝国の首都がある方角をモニターしろ。それで分かる」
『? 南東だね、わかっ……?! な、なんだこれは……!?』

 驚愕に引き攣った声を上げるロマニに、俺は深く溜め息を吐きながら応じた。

「見た通りだ。……紅い大樹(・・・・)が、ローマ帝国の国土、その大半を覆い尽くして(・・・・・・)いる」

 目に見える異常。第一特異点とは比較にならない明確な、特大規模の特異な光景。
 地形変動どころの騒ぎではない。国土侵食とでも言うべき、歴史の根幹から崩壊する変化だった。
 俺の言葉に、向こう側では絶句して言葉もない。

「正確な大きさが知りたい。ロマニ、呆けてないで頭と手を動かせ!」

 一喝すると、ロマニは我に返ったようだ。慌てて手元の装置を弄り、データを取り始める。

『なんだこれは……信じられない! 士郎くんの目測は正しい、その大樹はローマ帝国を呑み込んでいる。そして今も拡大を続けている(・・・・・・・・・・)! 君たちのいる方に向けてだ!』
「……」
『しかも……これはただ事じゃないぞ!? この反応は宝具だ、その大樹からは宝具の反応がある(・・・・・・・・)!!』
「……、なるほど。やはりあれはサーヴァントの仕業で、あんな出鱈目が成されているということは……」
『ああ、聖杯だ、こんなこと、聖杯でもない限り絶対にあり得ない! しかもなんだ、この反応は明らかに暴走――』
「ロマニ? ……ロマニ! 応答しろ、ロマニ!」

 唐突に通信が途絶える。
 俺は何度か呼び掛けるが、返答はない。やがてカルデアとの通信が完全に途絶えていることを悟ると、俺は一瞬瞑目し、不安げに瞳を揺らすマシュを。凛然と背筋を伸ばすアルトリアを。露ほどの動揺もないオルタを見渡す。

「……聞いての通りだ。事態はどう
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