敗将、枯れた赤薔薇
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闘し、少なくない消耗を強いた戦士として最高格の物だ。
戦士としてのキャリアはケルト神話最強の名に恥じず、また腕っぷしだけでなく教養も一流。そして人柄は知っての通りとても頼りになる兄貴肌。聖杯戦争の開催地が、知名度の高いアイルランドであったなら、アーサー王以上の霊格を有し理性のあるヘラクレスとも互角に戦えるだろう。
経験豊富にして百戦錬磨。戦場を選ばない実力、知性、人柄、宝具、燃費と五拍子も揃った大英雄。――告白するとだ。あの魔槍に宿った記憶と経験を解析、知識として蓄積している身としては、ぶっちゃけた話アーサー王が一人では確実に敗北し、アーサー王と同格の英雄が二人がかりでも仕留めきれず、三人でかかればあっさり離脱されるだろう、というのが俺の所感だった。
ずばり俺にとっての最強はクー・フーリンである。
アルトリアやオルタには絶対に言えないな、と思った。正直、アルトリアとオルタは望外の存在だった。ぶっちゃけ来てくれて大いに助かったわけだが、当初の考えではいないものとして作戦を練っていたわけだ。本命は今も変わらずクー・フーリンである。
そして、彼の召喚のために俺はこのブリタニアを転移地点に指定したのだ。
ブリタニア。それはグレートブリテン島の古い呼び名である。そしてグレートブリテン島には、アイルランドが含まれていた。つまりクー・フーリンのホームである。しかもご丁寧に時代は一世紀。流石に本人は死んでいるだろうが知名度はそれはもう色濃く残っているだろう。最新の伝説として、だ。
そして一度全盛期の状態で召喚してしまえばこちらのもの。カルデアの霊基一覧に完全体クー・フーリンが登録され、他の時代や国に移動しても実力が衰えることはない。
これはもう勝ったな、と慢心しても許されるレベルだった。
――それが大きな間違いだと気づかされたのは、すぐだった。
(士郎。緊急事態だ。森を出て開けた場所に出るのにあと百メートル。森から出たらすぐに南東の方角を見ろ。大至急だ)
「……?」
切嗣の機械的な、しかし緊急性を感じさせる報告に眉を顰める。
南東、ちょうど進行方向の真逆。いったい何があったというのか。俺は嫌な予感に冷や汗を流し始めている自分に気づく。
……嫌な感じだ。まるで、腑海林の領域に侵入した時のようだ。正直死ぬかと思ったあの時の記憶が甦る時点で、俺の危機感は最高潮に達している。
――今ここに「殺人貴」はいない。あの時のような奇跡はもう起きない。
自然、早足となった俺に、アルトリアらは追随しながら不審げに訊ねてきた。
「どうかしたのですか、シロウ」
あと少しでわかる、と短く応じる。その様子に、確かな危機感を感じた彼女達も気を引き締める。
あと十メート
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