幕間の物語「いつかどこかの時間軸」2
鬼!悪魔!士郎くん!
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システムだと念話は成り立たない。
今回の戦いで俺が最も痛感したのは、単独行動の多い切嗣との連絡手段の貧弱さである。もし通信機があれば切嗣もあんな無理して走り回ることもなかったはずだ。
カルデアを経由する通信には依存できない。あれは次元を隔てたものであるから不安定、いざという時に繋がりませんでしたなんて冗談としても笑えない。現地で機能し、現地で使える、そんな通信強度の高い機械なり礼装なりが必要だった。
これは後で知ったことだが、切嗣はこちらに負担をかけないように、自前の魔力だけで宝具を長時間発動し、固有時制御で二倍から三倍、加速し続けていたそうだ。
カルデアに帰る直前には、受けたダメージは皆無にも関わらず消える寸前だったのには衝撃を覚えたものである。
セイバーという魔力の大食いと、宝具の投影量産という役割をこなしていたマスターにこれ以上の負担を掛けるわけにはいかないという合理的な判断だと言っていたが……
「……切嗣にも酒を回すかな。嫌がるだろうが、酔わせてぐでんぐでんにしてやる。令呪使ってでも」
流石にあそこまで機械然としているのは人生損している。どこかで割り切らせ……平時だけでもいい、俺の知る切嗣のような穏やかさを手に入れてほしかった。
勝手なエゴ、押し付けがましい善意なのかもしれない。しかし彼は俺の知る切嗣ではなくても、たしかに衛宮切嗣なのだ。なら、彼だってただの暗殺者を『卒業』できるはずである。
これは勘だ。ただの暗殺者、ただの合理主義、それだけでこの聖杯探索――グランドオーダーを勝ち抜くのは不可能だと思う。合理性を突き詰めただけで勝てるなら、これほど簡単なことはないからだ。
いつかは切嗣の望むと望まざるとは別に、アルトリアらと連携を取る必要も出てくるだろう。そういう時に互いを信頼できなければ結果は見えている。……国に永遠はなくても、戦友は永久のもの。背を預けられる誰かを切嗣も手にしなければならない。
その第一歩として、俺だ。
社会不適合者を社会復帰させた経験もある。なんとかしてみせるさ、と胸中にこぼした。幸いにも彼と俺はサーヴァントとマスター、切っても切れぬ関係だ。邪険にはできないはずだし、仮にしてきても無視できる。なんて傍迷惑な野郎だと罵られたのは何時で、誰からだったか……。正直覚えがありすぎて判じ難い。
そんなわけで改造戦闘服と赤原礼装を着込む。なんやかんや言ったところで今は戦時中だ。いつでも出撃できる態勢でいるのは当然のこと。概念礼装の射籠手を装着し、己の魔術回路に接続される感覚と流れてくる魔力の充謐感に手応えを合わせる。
……この潤沢な魔力に慣れてしまうと、すべてが終わった後が大変そうだが……これ個人用にプレゼントしてもらえないだろうか。永久に貸し出してくれた
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