幕間の物語「いつかどこかの時間軸」2
鬼!悪魔!士郎くん!
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り、汗を流す。頭と体を洗ってから出て、バスタオルで水気を拭き取る。洗面台で髪を乾かすためにドライヤーを使っていると、不意に鏡に写った自分の髪の毛数本が白くなっているのを見つけた。
「……」
たったの数本、されど数本。色素の抜けた髪を見て流石に宝具の投影をやり過ぎたかと思う。
いや、肌が黒くなる、髪が白くなる程度がなんだというのか。別に死に瀕するような危機でもあるまいに気にしすぎだ。
俺は頭を振りながら、用意していた替えの下着を穿き、黒地のタンクトップを着る。そのラフな姿のまま台所に向かい、冷蔵庫を開けた。
俺の部屋は亡きオルガマリーに無理を言って台所付きの特別なものにしてもらった。他者に振る舞うための料理も悪くないが、時々でもいいので自分一人のためにしたいこともあったからだ。
そんなわけで、俺は冷蔵庫に秘めていた秘蔵の発泡酒と、三段重ねの小さなケーキのようなお手製チーズを取り出す。ぱしゅ、と気の抜ける音を立てて発泡酒の缶を開け、ぐびりと一口。そしてナイフをさりげに投影して一口サイズにカットし、チーズ一切れを口に運び咀嚼する。
「……くぅ! やっぱり、たまにはやらないとなぁ、こういうのもなぁ」
このチーズの名前はモンテボーレという。
アペニン山脈のリグーリア州、ピエモンテ州で古くから食されており、非常に癖のあるチーズである。
実はこのモンテボーレは、生前の万能人レオナルド・ダ・ヴィンチがこよなく愛したチーズであり、非常に強いこだわりを持っていたらしい。
しかしダ・ヴィンチの大々好物だったモンテボーレのレシピは後に失われてしまい、十数年前にピエモンテ州で再現しようという動きが起こった。
俺は七年前に偶然そのピエモンテ州に立ち寄り、再現途中のモンテボーレを試食させてもらい、牛の乳を七割と羊の乳を三割使えばいいのではと意見を言った覚えがある。
その後どうなったかは知らない。ただ個人的にそのモンテボーレを再現してみようと試みた結果、非常に癖はあるが満足の行く出来映えとなり、以降俺の中でモンテボーレは「気難しいが愛嬌のある猫」的な立ち位置となった。
「……ダ・ヴィンチにも持っていってやるか」
果たしてダ・ヴィンチの愛したモンテボーレの味を再現できているか気になるところでもあるし、今回彼には大いに助けられた。いわば礼も兼ねてのささやかなお返しという奴である。
……ついでに切嗣も呼ぶか。僕はサーヴァントだ、食い物なんて要らないとか言いそうだが、そこはマスター命令で食わせてしまえばいい。切嗣、ダヴィンチと話し合い、今後どのような装備を開発して貰うか注文したくもある。
通信機がほしい。冬木式の聖杯戦争だと、サーヴァントとマスターはレイラインを通じて念話できたが、カルデア式の契約
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