勝ちたいだけなんだよ士郎くん!
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した聖剣の熱よりも、あの螺旋の矢の方がよほど魔女に深手を与えていた。
いつ死んでもおかしくないほどの傷。全身がぐちゃぐちゃになって、自分にも分からない力で再生しなければ、きっと一分もせずに消滅していたはずだ。
「……きっと、ジルね。ジルが私に何かをした。だから助かったんだわ」
ジル。ジル・ド・レェ。今も昔も、魔女にとって最も頼りになる存在。いつも味方でいてくれた彼なら、きっと自分を助けてくれる。
だから、この再生はジルのお陰なのだろう。……あとで礼でも言ってやろう。特別に一度だけ。
体の傷が塞がった。驚異的な回復力。痛みが引いたからか、魔女は冷静に考えることができた。
――あの執念深い正義の味方様ならきっと私を追ってくる。私が深手を負った、というのもあるでしょうけど、それよりも私はサーヴァントを四騎も失った。好機だと睨むはずよ。実際に、こちらも危ないことに違いはないのだし。
手元にいるのはジルにバーサークしたアーチャーだけ。これは、非常に不味い。ファヴニールがまだいるとはいえ、ジャンヌ・ダルクの目にはあの極光が焼き付いていた。
最強の聖剣、エクスカリバー。ファヴニールを屠った聖剣よりもランクは確実に上。アーサー王自身も竜殺しに比肩、或いは上回る大英雄だ。
流石に竜殺しの属性まではないだろうが、あの火力を連発できるとしたら不利は否めない。早急に新たなサーヴァントを召喚しなければならないだろう。
しかし、問題は。
あのキ●ガイの追撃を振り切って、本拠地の城に戻れるかどうかだ。
無理だ、と魔女は直感する。何も手を打たないで逃げていたらきっと追い付かれる。
そうなれば、またあの聖剣か、あの剣弾が飛んでくるだろう。
――怖い。
それは恐怖だった。
誤魔化しようのない畏怖だった。
ここにいるのが自分一人だからそれを隠すことなく素直に認められた。
恐ろしいものを、恐ろしいと認められないのは、人間的成長のない愚か者だ。私は違う、とジャンヌは思う。
令呪を起動。迷いなく一角を消費し、アーチャーを空間転移させてきて、端的に命じた。
「……ここに私を追って敵が来るわ。勝たなくてもいい。少しでも長く敵の足を止めるの。私が新しくサーヴァントを召喚するための時間稼ぎぐらいきっちりしなさい。いいわね?」
言うだけ言って、ジャンヌは再び飛翔した。後に残されたのは、一人の女狩人。女神アルテミスを信仰する純潔の弓使い。
アタランテ。獅子の姿の狩人は、狂化によって鈍った思考で了解と短く告げた。
――だが、狩人も、そして魔女も知らなかった。
カルデアのマスターは、敢えて追撃になど打って出ておらず。魔女を追尾する暗殺者は、狂化で勘の鈍った狩人をまんまと素
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