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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 15
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は物足りなく感じてしまいますが、規定量さえ順守していれば三十分程度ですっかり元通りになりますので、其処はご安心ください」
 「あくまでも一時的な効果という事ですか」
 「その通りです。子供達にとって、孤児院の食材は根菜の皮一枚でも貴重な糧。皆様には様々な面でご不快に思われるでしょうが、どうか皆の努力を汲んであげてください」
 姿勢を正して頭を下げるプリシラに、騎士達は互いの顔を見合わせ……素早く礼を執った。
 「不快など、とんでもない!」
 「我ら一同、子供達の善意と次期大司教様のお心遣いに感謝しております」
 「料理も勿論、残さず頂戴致します!」
 確かに、できるなら食事を始める前に事情を話しておいて欲しかった、とは思う。打てる手が無いとしても、心構えだけはしておけただろうから。
 しかし、薬が入ったあの白い器……子供達が席を離れるまでは、食堂内の何処にも置いてなかった。プリシラの手が届く範囲内にも、だ。
 此処に居る騎士達は第三王子付き騎士団員。騎士の中でもより優れた技能を持つ精鋭、という職業柄自負しているが、初めて訪れる場所は隅から隅まで注意深く観察する癖が身に付いている為、己の目で確かめた情報に誤りは無い。
 誤りなんかがあったら、注意力不足で即護衛失格になってしまう。
 つまりあれは、プリシラ自身が食事を終えた後、子供達が食堂を出て行くまでの間に、何処か別の場所……恐らく厨房から急いで持って来た物。
 子供達に注目され、自身は塩辛いままの品々を顔色一つ変えられずきっちり完食するしかなかっただろうに、騎士達には少しでも食べやすいようにと、こうしてわざわざ一人一人に、しかも、頭を下げながら提供してくれたのだ。
 もしかしたら、子供達を早々と部屋へ帰してくれたのだって薬を配る為かも知れない……と考えるには少々空が黒すぎるが。
 此処までされて不快感を抱く不義理者など、騎士団の中には一人として居ない。
 仮に居たとしても、そのバカがうっかり眉を顰めた瞬間、物凄く嬉しそうで無駄に爽やかな笑顔の『あの方』が真剣を片手に飛んで来るような気がしてならない。当然『あの方』に目を付けられたそのバカは、任務と並行で三日三晩不眠不休の精神修行まっしぐらだ。同情の余地は一切無い。
 何処でどう見ているか分かったもんじゃない『あの方』ことアルスエルナ王国第二王子殿下の鋭い眼差しを思い浮かべて全身を震わせた騎士達は、目にも留まらぬ速さで席に着き、改めて塩味しかしない食べ物っぽい物と対面する。

 (おとこ)の無事が安全性を証明してくれているとはいえ、黒焦げたパンと匙で掬った跡がくっきり残る灰色のスープの組み合わせは、見た目にもなかなかの殺傷力だ。地味に、けれど、確実に見る者の食欲を削ぎ落してくれる。
 それでも毅然とした態度で薬を口に含む
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