純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 15
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えたのも事実だ。
ただ、それらの原因を作ったのは、寒さを増し始めた北風でも正体不明の病でもなく、孤児院を利用すると決めた直後のプリシラ本人だった。
彼女としては、視察の口実を得る為に『ちょっとした興奮状態になって、子供達の前で目眩でも起こしてくれれば良いなあ〜』と考えていただけで、こんなに長時間ひっくり返させるつもりは毛頭なかったのだが。
神父達は、プリシラが想像していた以上に清純だったらしい。
「はっ。そのクセ、私がどんなに誘いかけても眉一つ動かさないんだもの。つまらないったらありゃしない」
「残念ね? 私から手駒を奪えなくて」
「ふん。他の女に溺れてる童貞男なんて、もう要らないわ。その代わり」
女性の空いている手が、プリシラの形良い顎を。
女性の薄い唇が、プリシラの耳を妖しく撫でる。
「今夜は、楽しませてくれるんでしょう?」
聴く者の心を掻き乱す、女性の濡れた声色。
プリシラも愉しげに微笑み、自身の肩を抱く女性の腕に指先を添わせた。
「ふふ。そうね。楽しめると良いわね? お互いに」
頼りない燭台の光を浴びて絡み合う、冷たい藍の夜空と、冴えた銀の刃。
二人の唇が、呼気の熱を交わす距離にまで迫り……
「ん……、……ぅぐはぁっ??」
「「あ。」」
二人の話し声で目が覚めたらしい神父の、間抜けな悲鳴を聞いて離れる。
部屋の奥、二人の正面から勢いよく飛び散る水粒。
起き上がった直後に再びベッドへ沈んだ神父を覗き込んでみれば。
彼は口を開いたまま、白目を剥いてぴくぴくと痙攣していた。
その姿はまるで、壁に叩き付けられたハエ。
哀れさより先に気持ち悪さを感じてしまうのは、顔半分をだくだくと流れ続ける鼻血で汚しながらも、幸せそうにうっすら笑っているからだろうか。
「「……………………。」」
何とも言いがたい微妙な空気と、錆の臭いが微かに漂う薄暗い室内。
女性二人は、無言で互いの顔を見つめ合い。
「私は皆と食事してくるから。後始末をお願いね、先生」
にっこり笑った次期大司教が、素早く扉を開いて一歩外に出た。
出遅れた女性は苦々しい表情で腕を組み、盛大にため息を吐き捨てる。
「貴女、本当にいい性格してるわよね。プリシラ次期大司教様」
「ありがとう。褒められて伸びる私を、今後ともよろしく」
物言わぬ男衆の真ん中に、不満げな女性だけを残し。
ひらひらと手を振って境界線を閉じるプリシラ。
やや間を置いて内側から聞こえてきたバサ、バサ、と布団を振り払う音に唇の端を持ち上げて、自身は上ってきた階段を悠々と下る。
女性に触れられた耳を、摘まんだ袖口で拭いながら。
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