幕間の物語「いつかどこかの時間軸」1
メンタルケアだよ士郎くん!(※なおする側の模様)
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覚えていた。
対面の男は聞き役に徹している。
相槌のタイミング、空になったグラスに酒を足すタイミング、どれも秀逸で、あまりにも話しやすかったものだから、ついロマニも熱が入ってしまった。
――いつの間にか、ロマニは泣いていた。大粒の涙を流しながら所長のオルガマリーのこと、裏切ったレフのこと、死んだ部下のこと、仕事の大変さ、理不尽な今への愚痴を全て吐き出してしまっていた。
いつしか泣きながらベッドに蹲り、寝入ってしまったことに、ロマニは最後まで気づかなかった。
士郎は彼の体に掛布をかけ、ふう、と嘆息する。その顔には、責任感と絶望感に負けないように、意図的に激務に打ち込んでいた男に対する呆れと……それ以外の何か温かい感情が含まれていた。
「……ダ・ヴィンチ。終わったぞ」
「お、さすがのお手前」
ロマニの部屋の外に出て、待機していた天才に士郎はそう言う。衒いのない賛辞に鼻を鳴らして、士郎は腕を組んだ。
「いやー、助かったよほんと。ロマニの奴、私が何を言っても聞かないんだもん。人前で倒れられたらまずいって言ったのに」
「それで、こんな芝居をやらせたのか。呆れた男だ」
「なんだとー。そっちだって乗り気だったじゃん。普通に睡眠薬飲ませるだけでいいって言ったのに、わざわざ果実酒作って、溜め込んでるもの吐き出させたんだから」
あーあ、大の男が泣きながら寝ちゃって。これ記憶残ってたら恥ずかしさのあまり悶絶するねー。
ダ・ヴィンチが意味深に流し目を送ってくるのに、士郎は再度溜め息を吐くことで応じる。
「……で、ロマニの抜けた穴はどうする気だ?」
「そこは天才ダ・ヴィンチちゃんにお任せあれ、ってね。さすがにサーヴァントの私は目立つからいなくなる訳にいかない。だからシミュレーターを使ってると言い張れる、不在でも怪しまれない士郎くんにお任せするよ。ロマニの身代わりを、ね」
「……体格も声も何もかも、俺とロマニは似ても似つかないんだが」
「じゃーん。こんなこともあろうかと、立体ホロ変装装置を作っちゃったんだ。これでロマニのガワを被れてしまうのだよ」
「……ドラえもんかお前は。まあいい、ただし一日だけだぞ。俺も暇じゃないんだ」
「ドラ……? ……分かってる。ていうか、一日もやれるの? ボロ出ちゃわない?」
「舐めるなよ。敵地侵入の際に敵幹部に成り代わり、その仕事を恙無く果たしていたこともある。ロマニの仕事ぶりはもう何日も見た。一日だけなら、まあなんとかできる」
「いやー、なんだかんだ士郎くんも万能だよね。私ほどじゃないけど」
物真似は得意だからなと呟き、士郎はダヴィンチの手から怪しげな腕輪の装置を奪い取る。
しかし、これが言う通りの性能を発揮するならかなり便利なのだが――
「あ、それカル
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