暁 〜小説投稿サイト〜
問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― 終末は少年少女へ問う
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冗談を、と言わんばかりの軽いノリで返す。まるでそれが彼女の予想ではなく、決定された未来であるかのように。

「だってダブルゲームトリプルゲームって、あれでしょ?つい先日のアジ=ダカーハ相手に使ったみたいなやつ。他のゲームのルール、時代背景まで取り込んで敵に対してより一層の制限を加えるやつ。そもそもまるで違うゲームでそれを行おうと思ったら詩人の力が必須で、お兄さんはそれを所持していない」

これが一つ目の理由、と人差し指を立てる。なるほど確かに、彼女の言うとおりだ。実際アジ=ダカーハに挑む際にも詩人イソップの手を借りている。
彼らの力を借りて主催者権限を書き換える以外の手段では、謎解きも何もない、極々単純なゲームしか開催できはしない。

「そして何よりの理由が、この二つ目。お兄さんは単純に、それだけの複雑さを持ち、気軽に発動できる主催者権限を一つしか持っていない」

そう言うと再び手を握って、人差し指だけを立て直す。

「まず、『鬼道』の主催者権限。これは極々単純な主催者権限で、『期待され、渇望され、祝福された、未来に世界を救う英雄』としての霊格を下に構成される主催者権限。強いて異常な点を上げるなら『過去に成した異形』からでも『過去に受けた敗北』からのゲーム構成じゃないことだけど……そんな主催者権限、いくらでもあるしね」

そもそも、この箱庭と言う世界にとって未来という概念は大した意味を持たない。それこそかの大魔王アジ=ダカーハの主催者権限だって、未だ成されていない偉業をもとにしたモノだ。まああれにルールとかなかったけど。

「次に、『蚩尤』の主催者権限。こっちに関してはお兄さんが普段から便利アイテム扱いして好き勝手書いてたルールじゃなくて本来のルールで用いればちゃんと複雑で法則(ルール)を強制するものなんだけど、今はウィル・オ・ウィスプの本拠を守る手段として使ってる。と言うわけで、使えません」

蚩尤。中国神話において語られる鍛冶神。黄帝から王座を奪うという野望の下、兄弟と無数の魑魅魍魎を味方につけ、彼を追い詰めるに至った悪神。その霊格の在り方故に伝承を下地として主催者権限を発動するのなら敗者のそれになるしかないが、それでも彼が成し遂げた偉業は中国史の進化において無視できるものではなく。それ故に、それなり以上に強力で苦しいルールを強制されることは間違いない。

これで2つ、と中指も立てる。なるほど確かに、その主催者権限は解除されない限りそもそも使うことができない。

「三つめは、『アジ=ダカーハ』の主催者権限。これはまあ単純な事実としてそもそも現時点でルールが存在しない。四つめの『ジャック・ザ・リッパー』の主催者権限はもう既にクリア条件がバレてる上ジャックさんとの契約がある以上使用条件を満たせず発動できない」


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