それでいいのか士郎くん
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の御子は、槍兵のクラスだったなら近距離戦でアーチャーを一蹴するだろう。あの大英雄には矢避けの加護もある。相性の良さから騎士王が手こずったほど苦戦することもなかったはずだ。
だが、光の御子はキャスターとして現界した故に、アーチャーの弓を凌ぐことはできても詠唱できず、攻勢に回ることができなかったはずだ。しかも、黒化したサーヴァントに追われ、ゲリラ的に戦い続けている最中でもあったはず。聖剣すらも凌いで逃げ切る辺り呆れたしぶとさだが、逆に言えばそれだけで、単独でこちらに攻めかかることは出来ないはずだ。
では、誰が。
――なるほど。異邦の者達か。
暫しの沈思の末、騎士王は思い至った。人類が滅びるほどの事態、抑止力が働かぬ道理なし。されど、この滅びは既に決定付けられている。既に滅んでいるのだ、滅んだものに抗う術などあるはずもなく、必然、抑止力が働くことがあるはずもなし。
であれば答えは自明。過去に因果なく、現在に命なしとなれば、特異点と化したこの時代を観測する術を持った未来の者しか介入は出来ない。
異邦の者が人理を守らんがために過去に飛ぶ――出来すぎた話だ。都合が良すぎる。しかし、そんな奇跡がもしあるとしたなら……この身は試練として立ち塞がるしかないだろう。
既に滅んだものを救おうというのなら。滅びの運命を覆さんとするのなら。――魔術王の偉業に荷担する羽目になった小娘一人、打ち倒せずして使命を果たせるわけがない。
――私を超えられもせず、聖杯探索を果たしきれるはずもない。超えて魅せろ、この私を。
王としての矜持か、意図して屈するような腑抜けにはならない。むしろ全力で迎撃し、これより聖杯を求めて来るだろう者達を滅ぼす腹積もりであった。
全力の騎士王を打倒してこそ、はじめてグランド・オーダーに挑む資格ありと認められる。そう、騎士王アルトリア・ペンドラゴンは信じていた。
信じていたのだ。
その男を見るまでは。
――弓兵を倒し、先に進んだ。
何か物言いたげなマシュの頭に手を置き、今は勘弁してくれと頼んだ。
嘆息一つ。仕方ないですね、とマシュは微笑んだ。困ったようなその笑顔に、やっぱりマシュはいい娘だなと思う。普通、あんな卑劣な戦法を取った奴に、そんな含みのない笑みを向けられるものではない。
しかし、「勝つためなら仕方ないです。この特異点をなんとかしないと、人類が危ないんですから」と言われた時は、流石に閉口してしまいそうだった。無垢なマシュが、自分に影響されていくようで、なんとも言えない気持ちになったのだ。
――それでも、もう心は固めている。特異点となっているのが冬木と聞いた時から、覚悟は決めていた。
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