卑の意志なのか士郎くん!
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て、絶対に倒さねばならない『敵』だと認識する」
「ふん。もともと敵同士だっただろうが。何を今更」
「……そうだな。確かに、今更だ」
どこか、苦笑めいた声だった。
―― I am the bone of my sword.
「先輩! アーチャーは明らかに宝具を使おうとしています! 阻止しましょう!」
決然と唱えた文言は、魔力を宿さずとも世界に語りかける荘厳な響きを伴っていた。
その雰囲気だけで察したのだろう。マシュがそう訴えてくるも、俺は首を左右に振って、それを拒否した。
黙って見守る。それは、決して男の生き様を見届けるためなどでは断じてない。
俺は奴の固有結界を見ることに意味があるから黙っているのだ。奴もそんな打算などお見通しだろう。
だが、それでも、力で押し潰せると奴は考えている。そしてそれは正しい。エミヤが固有結界『無限の剣製』を発動すれば、今の未熟なマシュと、不出来な俺は押し負けてしまうだろう。唯一の手段は、俺も固有結界を展開して、奴と心象世界のぶつけ合い、打ち勝つことだけ。
エミヤが望んでいるのはそれだろう。自分の世界で、俺の世界に勝つ。そうしてこその勝利だ。
だが――
――So as I pray, unlimited blade works.
詠唱が完成する。紅蓮が走る。世界が広がり、世界が侵食されていく。
見上げれば、緋色の空。無限の剣が突き立つ紅の丘。
空の中で巨大な歯車が回っている。その枯渇した威容がエミヤの心象を物語っていた。
「――固有結界、無限の剣製。やれやれ、俺には一生を掛けてもこんなに宝具を貯蔵したりはできないな」
苦笑する。周囲を見渡して改めて、格の違いというものを思い知った。
どれだけ戦い続けて来たのか。何もかもを犠牲にして、理想のために歩み続けてきた男の結実がこれか。
盗み見た己の矮小さ、卑小さが滑稽ですらある。
「どうした、見ただけで戦意を喪失したのか、衛宮士郎」
「まさか」
試すような言葉に、俺は失笑した。
俺の辞書に諦めるという言葉は載っていない。
そして、勝算もなく敵の切り札の発動を許すほどおろかでもない。
「――卑怯だと思うか? なら、それがお前の敗因だ」
「なに?」
俺は、言った。
気配を遮断したまま、エミヤの背後にまで迫っていたサーヴァントに。
「やれ、アサシン。宝具展開しろ」
エミヤは直前になって気づいた。固有時制御によって体内時間を遅延させて潜伏していた状態を解き、攻撃体勢に入ったがゆえに気配遮断が甘くなった第三者に。
「な――」
「時のある間に薔薇を摘め」
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