卑の意志なのか士郎くん!
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理はないな」
「なんだあれは。なんだそれは。そんな……そんな簡単に……貴様は……貴様が!?」
錯乱したような有り様だった。あの、英霊エミヤがだ。
(ありがとう、お兄さん!)
(いや、助かった。若いのによくやるねえ)
(ねえ、ねえ! シロウ兄ちゃん! この間話してくれたヒーローの話聞かせてくれよ!)
(助けて! 助けてください! シロウさん、うちの娘が、化け物に拐われて!)
(いやぁ! 助けてよ、シロウさん!)
(助けに来てくれたの……? こんな、化け物の根城まで? ……ありがと)
(美味しい! なにこれ! すっごく美味しいよ!)
(僕たち、シロウさんに出会えてよかった!)
(ありがとう)
(ありがとう!)
『ありがとう!』
「なんだ、これは……なぜ貴様の記憶には、こんなにも『笑顔』がある!? これではまるで……正義の味方のようではないか!?」
頭を抱えて、入ってきた記憶に苛まれるようにアーチャーが叫んだ。
血を吐くような、嫉妬に狂いそうな魂からの雄叫びだった。
それは、アニメか漫画にでも出てきそうな、ヒーローだった。かつて、エミヤシロウが思い描いた、理想の姿だった。
それが。
それを成しているのが、目の前の未熟な衛宮士郎。
アーチャーには分からなかった。何をどうすれば、あんなことになる。わからないから、叫んだのだ。
「何をバカなこと言ってる。正義の味方はお前だろうが、アーチャー」
「オレが?! オレがか!? 周りを不幸にし続けたこのオレのどこが?!」
妬ましいのはこちらの方だというのに、奴は必死に問い質してきていた。
どう考えても、正義の味方はエミヤの方であるというのに。
「俺はただ、俺のために慈善事業に手を出していただけだよ。誰かのため、なんて考えたこともない。徹頭徹尾、自己中心。所詮は偽善だ、そんなものが正義の味方なんて張れるわけないだろう」
「……今、なんと言った?」
「……俺のために生きてきたと言っただけだが」
「自分のためだと? 衛宮士郎が!?」
「そうだ、それの何が悪い」
俺は俺の生き方を選んだ。そこに恥じるものはなにもない。俺は俺のために生きている。だから、俺は俺が悔やむようなことはしないし、嫌だと思うことは一度もしてこなかった。
それだけだ。だから、他人のために死ぬまで戦い続け、死んだあとでまで人間のために戦い続けているエミヤに、俺は正直畏敬の念を覚えていたのだ。
俺にはそんなことはできない。だって、俺にとっての一番は、俺自身に他ならないのだから。
「……そうか。わかった。衛宮士郎、オレは、お前をもう未熟者とは言わん。お前はオレにとっ
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