卑の意志なのか士郎くん!
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恐怖はある。不安げに揺れる瞳を見ればわかる。だが、それ以上に強く輝く意思の萌芽があった。
「わたしは先輩のデミ・サーヴァントですから。それに、先輩を守りたい――その思いは本当だって、わたしは胸を張れます。だから、迷いなんてありません。先輩のために、わたしは戦います」
そうか、と頷く。その健気さに報いる術を今、俺は持っていない。
あらゆる感傷を、切り捨てる。この思いを、利用する。蔑まれるかもしれない、嫌われるかもしれない、それでも俺は、勝たねばならない。俺のために。俺の生きた証を守るために。
マシュが生きた世界を守る。俺のために。
その結果、マシュに嫌悪されることになろうとも。俺に迷いはない。俺の戦い方を、ここでマシュに知ってもらう。
「ならいい。――勝つぞ。勝ってカルデアに帰ろう」
「はいっ!」
気合いの入った返事に、俺は更に決意を固める。
狭い通路を抜け、拓けた空間に出た。
大聖杯は近い。肌に感じる魔力の波動がいっそう強くなっている。そして、
「――そこまでだ、衛宮士郎」
俺とマシュの行く手を阻むため、前方に弓兵のサーヴァントが実体化した。
「やはり来たか」
ぽつりと呟く。
物理的に考えれば、俺とマシュを狙撃できる高台からここに先回りしてくるのは不可能である。だが、奴はサーヴァント。霊体化して、神秘を宿さない物質を素通りできる存在。
生身しか持たない俺達を先回りして待ち受けるのは容易だったろう。
「妙な因果だ。そうは思わないか?」
何を思ったのか、奴は俺に語りかけてきた。
「そうだな。なんだって英霊化した自分と対峙することになる。出来の悪い鏡でも見せられている気分だ」
「フン。それはこちらの台詞だがね」
応じる必要なんてないのに、奴の皮肉げな口調に、思わず毒を含んだ言葉を返していた。
マシュが驚いたように声を上げた。先の前哨戦、姿は見えても顔までははっきり見えていなかったのだろう。
「先輩が……二人……?」
「……ああ。どういうわけか、アイツと俺は似た存在だ。真名はエミヤシロウ。十年前俺が体験した聖杯戦争で、俺はアイツに会っている。……因縁を感じるな、という方が無理な話だ」
「ほう? では貴様はオレに遭っていながら生き延びたわけだ。――となると貴様は、あの時の小僧か」
ぴくり、とエミヤは眉を動かした。彼の抱く願望からすれば、衛宮士郎を見逃すなんてあり得ない。仮に見逃すとしたら、それは私情を抜きにして動かねばならない事態となったか、巡りあった衛宮士郎が正義の味方にならないと――英霊エミヤと別人になると判断したかになる。
そして、俺とのやり取りで
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