気まずそうです士郎くん
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子供を想起させる。
「俺は……衛宮、士郎。あんたの、養子なんだから」
その告白は、血を吐くような悲痛さを伴って。
は、とマシュはアサシンと士郎を見比べる。まるで似ていない。義理の親子なのだろうか。
アサシンは、ぴくりと片眉を跳ね上げる。
「なんだって? 僕の、息子? ……本気か?」
アサシンの言葉は、士郎の耳に届いていなかった。恐ろしい想像が彼の中を駆け巡っていたのだ。
「俺は……いや、なぜ切嗣が守護者の代行なんて……代行? 誰の……俺、か……?」
――錬鉄の英雄、エミヤシロウ。それは、この世界線では決して生まれない存在。
世界は矛盾を嫌う。世界にとって、英霊エミヤの誕生は決定事項。そのエミヤが生まれないとなれば、その穴を補填する者が必要だ。
では、何者であればエミヤの代行足り得るのか。現代で、彼の戦術ドクトリンに近いものを持つ人間を列挙し、その中でエミヤに縁の深い者を特定すれば……それは、同じエミヤ以外にはあり得ない。
血の気が引いた。
士郎は、頭が真っ白になった。先輩! 先輩! そう何度も呼び掛け、肩を揺する少女の声も届かない。
その想像は、近いようで遠い。似たような因果で切嗣は守護者代行として存在しているが、そこにこの世界の士郎が関与する余地は微塵もなかった。
だが、士郎の中の真実は違う。自分が守護者にならなかったせいで――世界と契約しなかったせいで、死後の切嗣の魂が呪わしい輪廻に囚われてしまったのだと誤解した。
火の海の中、かつて救われた者と、救った者と同じ起源を持つ者が対峙する。
動揺のあまり気が抜けてしまった士郎――しかし、アサシンは残酷にも、真実を淡々と告げた。
「何を勘違いしているか知らないが、僕はあんたを知らない。あんたの言う衛宮切嗣と僕は別物だ。だからあんたが勝手に罪悪感を抱くこともない。指示を出せ、マスター。サーヴァントはマスターに従うモノだ」
その言葉は、端的に真実だけを表している。しかし士郎からすれば、それは自分を気遣った言葉に聞こえてくるものだった。
士郎は、優しかった切嗣を知っている。優しすぎて破滅した男を知っている。士郎にとっての切嗣の真実は魔術師殺しではない。うだつの上がらない、あの、気の抜けたような男だったのだ。
知識なんて関係ない。そんなもの、既にないに等しい。
腑抜けた士郎に、アサシンはなおも辛辣だった。
「はぁ……あんたの事情なんて知ったことじゃないし、聞きたくもない。ともかくサーヴァントとしての務めだけは果たす。……僕はそれでいいんだ。だからマスター、あんたはあんたの務めを果たせ」
「……っ!」
それは彼なりの、別の可能性の自分が持ったかもしれない、名前も知らない息
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