気まずそうです士郎くん
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取りで、こちらの気質を推し測っていたのか、アサシンはまるで気を緩めた様子もなく、『安心』という言葉を使った。
それはあくまでビジネスライクなスタンスであり、マシュはやり辛そうだったが、実のところ俺にとってはやり易い相手だった。
印象は、兵士。最小の戦闘単位。目的のためなら何もかもを投げ出せる自己のない機械。
その印象は間違っていない、という確信があった。なにせ俺は、そんな手合いを何人も知っている。えてしてそうした者こそが、俺にとっては難敵であり、同時に心強い味方でもあったのだから。
こういった、情を絡めずに確実に任務を遂行できるだろう手合いは、大きな作戦を実行するにあたり必ず一人は必要な人材である。
事が急であり、確実性を求められる場面であれば、このアサシンほど信頼して用いられる兵士はいない。俺はアサシンの性質を好ましいと感じていた。無論仕事の上では、だが。
アサシンは言った。どこか自嘲の滲んだ声音で。
「残念ながら、あんたの目は確かだ。僕は正規の英霊じゃない。守護者といえば伝わるか?」
「……抑止力か」
「その通り。そして僕はその中でも更に格の落ちる、とある守護者の代行でしかない。本来の僕はしがない暗殺者、守護者にすらなれない半端者さ。こうして召喚されたのが何かの間違いだと言えるほどのね」
「……守護者の代行だと?」
「ああ。僕の真名は――」
言いながら、アサシンはフードを外した。
壊死しているかのような褐色の肌、色素の抜け落ちた白髪。露になったその風貌に、
俺は、絶句する。
「《《エミヤ》》だ。――まあ、僕の真名には一発の弾丸ほどの価値もない。忘れていい」
褐色の肌、白髪。エミヤと名乗ったアサシンのサーヴァントを前に、マシュ・キリエライトは目を丸くしていた。
それは奇しくも、マシュがマスターに仰ぐ男性の姓でもあったのだ。
何か特別な繋がりでもあるのだろうか。マシュがそう思ったのも束の間、不意に、マシュの傍に立っていた士郎がよろめいた。
「っ? 先輩……!?」
慌てて体を支える。士郎の顔は、これ以上なく青ざめていた。
「エミヤ……? エミヤ、キリツグ……?」
うわ言のように呟いた士郎に、アサシンはその氷のように冷たい表情を微かに変化させた。マシュには読み取れないほど、本当に小さな変化。
「……驚いたな。僕を知ってるのか?」
それは、肯定の意味を持つ問いかけだった。
士郎は声もなく立ち尽くす。まるで、もう二度と会うはずのない男の亡霊に遭遇したかのような、魂の抜けた顔だった。
「……知っている。……知っているとも。俺は、俺は……」
震えた声が、親からはぐれた
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