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人理を守れ、エミヤさん!
帰郷しちゃった士郎くん!
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、無力だ。今は、それがとても口惜しい。















 ――懐かしい景色だ。

 焦土と化し、尚も炎上する汚染された都市、冬木。その中心の都市部にレイシフトした俺は、奇妙な感慨を抱きそうになるのを寸でで堪えた。
 意識の断絶は少なくとも自覚している限りはない。状況を把握しようとして、ふと、自身の右手に懐かしい刻印の形を見る。
 令呪。冬木でマスターをしていた頃と同一の形。それがあることに眉を顰める。……あまり良い思い出とは言えないもの、その象徴がこの令呪だった。
 自分を偽っていたあの頃。頑なに衛宮士郎を演じ、生き抜いた約十年間の闘争期間。……俺は、衛宮士郎になってから、聖杯戦争を制覇するまでの時間、ずっと地獄のような戦争をしていたのだ。
 自分を見失わないための戦い。自分を失わないための戦い。命を懸けるよりも、あるいはずっと辛かったかもしれない。他人の生き方を投影した代償は、己のアイデンティティーの崩壊だった。もう、あんな真似はしたくないと、心から思う。

 ――唯一。あの日々の中で心が安らいだのは……。さて、いつの頃だったか。

 回想に向かい、遠退きそうになった意識を繋ぎ止める。
 奇しくも冬木に再来し、同じ形の令呪を持つ。それが、自分を『衛宮士郎』にする呪いのようで、胸くそ悪くなっていた。

「……いや、待て」

 気づく。右腕を見た。二の腕から千切れていた腕が完全に修復されている。ついで腰を見た。こちらも同様。見た目だけなら正常だ。
 解析する。完治はしていない、しかし確実に死の危機から遠ざかっていた。なぜだと考えそうになって、はたと思い至った。
 なぜ令呪が俺にある? いや、そうじゃない。令呪があるということは、つまり俺はマスターになってしまっているということ。そしてマスターにはサーヴァントが付いているものだ。

「――先輩」

 背後から、声。気づかなかったのがどうかしているほど強大な魔力を内包した気配だった。自らの迂闊さを内心罵りながら振り向くと、そこには。

「……マシュ……?」
「はい。貴方のデミ・サーヴァント、シールダー。マシュ・キリエライトです、先輩」

 漆黒の鎧に、身の丈以上の巨大な盾。華奢な体躯にはあまりに不釣り合いで、しかしその凛とした雰囲気と完璧に調和した武装形態だった。
 それはマシュだった。見間違うことはあり得ない。彼女がサーヴァント化していることに対する驚きは、ああ、そういえばそうだったか、という納得によって消えていた。
 ――そうか。彼女が、グランド・オーダーを旅するサーヴァントだったのか。

 マシュが心配そうにこちらを覗き込んできた。

「先輩? 大丈夫ですか? 傷が痛みますか?」
「……完治はしてい
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