普通に死にかける士郎くん!
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慣れていた。ほとんど知識の磨耗した俺が、事前に防げることなどないに等しい。自分を守り、備えるのがせいぜいだった。
今日は、すべてのマスター候補の召集が完了し、特異点へのレイシフトを実行する日だった。
オルガマリーが、時計塔から来た連中の手綱を握るための日であり、そしてずぶのド素人のマスター候補に事態を説明する日でもある。大事なブリーフィングが日程に組まれていた。
オルガマリーの指揮には服従すると契約していた俺は、諾々と彼女の求めるままにそのすべてに立ち会った。
今回発見された特異点は、衛宮士郎の故郷である冬木であった。そういう意味で、最も状況に対応しやすいだろうと目され、オルガマリーからも期待されていた。
まあ、予想は裏切っても、期待には応えるのが出来る男というものだ。期待通りの結果を出そうとオルガマリーには言っておいた。
そうして、俺はオルガマリーらがカルデアのスタッフが見守る中、規定通りに霊子筐体というポッドの中に入り、レイシフトの時を待った。その前に、同じA班のマシュと目が合った気がして――
次の瞬間、俺の入っていたポッドは、他のポッドと同じように爆破されていた。
「――――」
普通に瀕死の重傷を負った。
視界がチカチカと明滅し、耳が麻痺してしまっている。咄嗟に己の体を解析すると、上半身と下半身がほぼ泣き別れになっていて、内臓ははみ出し、右腕が千切れていた。
奇跡的に即死せず、頭が無事で意識が残っている。日頃から痛みに耐性をつけてあったお陰だろう、俺は凍りついたような冷静さで、死に瀕して体内で暴走しかけていた固有結界を制御、活用し上半身と下半身を接続。内臓もきっちり体内に納め、右腕も応急処置的に同じようにしてくっつけた。
即死さえしなければ、どうとでもなる。
我ながら化け物じみた生き汚なさだが、これはかつて俺の中で作動していた全て遠き理想郷が、傷を負った俺の体を修復していた手順を真似ているにすぎない。固有結界『無限の剣製』によって、体を継ぎ接ぎだらけのフランケン状態にしただけで、今にも死にそうなのに違いはなかった。
早急にオペってほしいがそうも言っていられない。俺は死体に鞭打ちながらコフィンから這い出て、炎に包まれた辺りを見渡した。
……オルガマリーが、死んでいた。俺と似たような状態になって。他のマスター候補たちも、死にかけている。
怒りを抑える。今の俺に出来ることは、かなり限られていた。
冷静さを失ってはならない。意識のある者を探していると、一人だけ残っていた。
マシュだ。彼女も、瀕死の重体だった。
下半身が瓦礫に潰されてしまっている。
「――」
声が、出ない。
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