普通に死にかける士郎くん!
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を二人で熱唱し、マシュはいつのまにか疲れ果て、俺にあてがわれた部屋のベッドで穏やかな寝息をたて始めていた。
こうしてマシュとデュエットするのもはじめてではない。最初は恥ずかしがっていたし、歌声も音程を外した音痴なものだったが、数をこなす内に上達して俺よりも上手くなっていた。
時には半ば連れ去る強引さでロマニやオルガマリーも参加させ、声が枯れるまで歌ったものだ。オルガマリーなど、始めこそ低俗な歌なんて歌わないと意地を張っていたが……まあ、あの手の女性をあやし、或いはおだて、その気にさせるのは得意だった。いつのまにか一番本気で歌っていたのはオルガマリーで、あとからからかうと顔を真っ赤にして怒鳴ってきたものである。
マシュの寝顔を見下ろしながら、その髪を手櫛で梳く。フォウはマシュの懐で丸くなり一緒になって眠っていた。
「……俺は、俺が気持ち良く生きるために動いてる。だからマシュ。俺のために、幸福に生きろ」
マシュのような子供は、駄々甘に甘やかしこれでもかと可愛がるのが俺のやり方だ
厳しさに意味がないのではない。厳しさよりも、可愛がることの方が個人的に有意義なだけだ。
餓えに苦しむ人がいるのを知ってしまった。
争いを嘆く人々がいるのを知ってしまった。
貧しさに喘ぐ子供がいるのを知ってしまった。
――知ってしまったら、見て見ぬふりはできない。
素知らぬ振りをして生きてしまえば、それはその瞬間に、俺という自我が俺らしくないと叫んでしまう。
無視できないし、してはならない。俺が俺らしく生きるため、俺という人間をまっとうするために、極めて自己中心的に、そういった『求める声』に応え続ける。
……人間として破綻しているはずがない。俺は俺の欲求に素直に生きているだけなのだから。
だから、善人たち。無垢な人たち。俺のために、俺の人生のために救われろ。俺の一方的な価値観を押し付けてやる。俺の思う『幸福』の形で笑えるようにしてやる。要らないならはっきり言えばいい。俺はすぐにいなくなるだろう。
俺に救われた人間は、俺という人間の生きた証になる。俺が衛宮士郎ではないという証明になる。だから俺は俺のための慈善事業を継続するだろう。
世界中を回っているのはそのため。冬木に残した後輩を、本当の意味で救うために対魔・対蟲の霊器を求めてのことでもあった。
だから。そんな『俺の生きた証』を台無しにする人理焼却など認めない。
死にたくないし、死なせるわけにはいかないのだ。なによりも、俺のために――
――爆音。
カルデア全体が揺れたかのような轟音が轟き、警告音が垂れ流しにされ、視界が赤いランプの光で真っ赤に染まった。
なんだとは思わない。不測の事態には
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