普通に死にかける士郎くん!
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札のようなもの。それを解析させろなどとは言えないはずだ。
額に滲んだ汗を拭い、乱れた呼気を整えつつ、一応は残心を示しながら、管制のレフへ強がるように応答する。
「この程度、さほど苦戦するほどでもないな」
『ほう。英霊の出来損ないとはいえ、仮にも英霊の力の一端は再現できていたはずなんだが。流石に死徒をも単騎で屠る男は言うことが違う』
「戯け。今のが英霊の力の一端だと? 冗談も休み休み言え」
探るような気配のあるレフの物言いに不快感を感じるも、潜在的な警戒心を隠しつつ無造作に返す。
カルデア戦闘服とやらを着用しているからか、魔力の目減りはまるでなく、寧ろかつてなく調子が良い。これならバーサーカー・ヘラクレスを五分間ぐらい足止めし、殺されるぐらいはできるだろう。……結局殺されるのに違いはないわけだが。
今まで無理な投影など、第五次聖杯戦争の時以外でしたことはないためか、未だに髪は艶のある赤銅色を保ち、肌も浅黒くはなっていない。赤い髪を掻き上げて、俺は自らの所感を述べた。
「アサシン――今のは山の翁か。あれは暗殺者でありながら気配の遮断が甘く、奇襲に失敗した後の対処が拙い。暗殺者が、こともあろうに正面から戦闘に入るとは論外だ。加え、いざ戦ってみれば敏捷性は低く力も弱い。逃げる素振りも駆け引きする様子もない。戦闘パターンもワンパターン。まるで駄目だな。オリジナルのアサシンなら、初撃で俺を仕留められなかったら即座に撤退していただろう。思考ルーチンから組み直すべきだと進言する。これでは英霊の力の十分の一にも満たんぞ」
『ふむ。……そんなものか』
「……」
レフの言葉は、アサシン擬きに向けられたものか。それとも俺に向けられたものか。定かではない、ないが、しかし。底抜けに凝り固まった悪意の気配から、きっと俺へ向けた嘲弄なのだろうと思う。
そうなら良い、と思った。俺は無言でシミュレーター室から退出し、レフの視線から外れた瞬間に、額に掻いていた汗をぴたりと止め、呼吸を平常のものに落ち着けた。
実のところ、俺は全く疲弊してはいなかった。本物の英霊、それもアーサー王やクランの猛犬、ヘラクレスやギルガメッシュを知る身としては、あの程度の影に苦戦するなどあり得ない話だ。宝具の投影を自重せずにやれば、開戦と同時に一瞬で仕留められる自信がある。
本当なら味方のはずのレフや、カルデアに対して実力を隠すのは不義理と言える。あるいは不誠実なのかもしれない。
しかし、俺は魔術師という人種を、遠坂凛以外欠片も信用していなかった。敵を騙すにはまず味方からともいう。彼らを欺くことに罪悪感はなかった。
それに、どのみちグランド・オーダーが始まれば、力を隠し続ける意味も余力もなくなるだろう。俺が期待以上の働きをす
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