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人理を守れ、エミヤさん!
逃げたら死ぬぞ士郎くん!
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なくいずれ淘汰されていく羽目になる。俺としてはそれは避けたかった。なにせ俺は死にたくないのだ。

 そう。死にたくないのである。

 このままだと人理焼却に巻き込まれ、俺は死んでしまうことになる。物語的に事態は解決し、結果として俺は死んでいないということになるのかもしれないが、見ず知らずのだれかに自分の命運を託すほど愚かなことはない。
 俺は自分の運命は自分で決めたかった。故にカルデアが実在し、そこにスカウトされた時点で、俺の去就は決まったも同然である。死にたくないなら、カルデアで人理を守護するしかないのだから。

「条件は二つだ」

 言いつつ、ざっと思考を走らせる。目の前の女は無能を嫌い、話の遅い人間を嫌う神経の細い有能な女である。
 単刀直入な物言いを許容する度量はあるだろうから、すっぱり要求を告げるべきだ

「まず一つ。俺がカルデアに所属し、そちらの指揮系統に服従する代わりに、ことが終わればアニムスフィアに俺の活動の援助をしてもらいたい」
「貴方の活動って……慈善事業のことかしら」
「ああ。そろそろ単独で動くのにも限界を感じていたしな。俺がロンドンに来たのは、パトロンになってくれる人間を探すためだったんだ。……世界中の、飢えに苦しむ人達のために起業して、食料品を取り扱う仕事をしたいと考えている」
「……つまり、資金の提供ね? それに関しては、カルデアでの貴方の働き次第よ。全面協力をこの場で約束することは出来ないわ」
「当然だな。それで構わない」

 まずは、分かりやすく金を求める。俗物的だが、俺はそう思われても構わない。実際俗物だしな。
 分かりやすいというのは良いことだ。難解な人間よりも単純な人間の方が親しまれやすいのは世の真理である。
 現に、目に見えてロマニとオルガマリーの俺を見る目が変わった。レフはよくわからんが、魔術師とはえてして腹芸が得意なものである。気にするだけ無駄で、隙を見せなければそれでよかった。

「二つ目だが……いいかな?」
「ええ。言うだけ言ってみなさい。前向きに検討するぐらいはしてあげる」
「今後は名前で呼び合おう。これから力を合わせていくんだ、貴女のような美しい人と親密になりたいと思うのは、男として当然のことだろう?」

 洒落っけを見せながらそう言うと、ロマニは苦笑し、オルガマリーは「なっ」と言葉につまった。

 やはりこういった明け透けな言葉には弱かったらしい。
 最後に高慢な女性に有りがちな弱点を見つけ、オルガマリーのなんとも言えなさそうな表情を堪能しつつ、俺は席を立って半ば勢いでオルガマリーの手を取った。
 友好の証の握手だと言い張ると、オルガマリーは微妙に赤面しつつ応じてくれた。

 そうして、俺のカルデア入りが決定したのである。





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