逃げたら死ぬぞ士郎くん!
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ええ。そうよ」
……俺は少し意外に思った。彼女は俺に重い価値があるわけではない、殊更に重要視しているわけではないと言い、こちらが大きな態度を取る前に牽制してきたのだ。
当たり前だが、俺より年下の彼女も、海千山千の怪物犇めく時計塔で、多くの政敵と鎬を削っているのだ。見た目の印象とは裏腹に、そうしたやり取りは充分経験しているのだろう。貴族的な家柄ということもあり、交渉事では手強い相手になると思った。
まあまともに交渉するほど俺も間抜けでないし、そもそも交渉しなくてはならないこともない。相手に合わせて要求を出し、きっちり対価を貰うことで相手の安心を買うぐらいはするが、それだって余り重要視することでもなかった。
「それと、ミス遠坂をなぜ召集しなかったのかは、言うまでもなく貴方なら分かるはずよね?」
「……分からなくはない。遠坂がロード・エルメロイU世の教え子だからだろう」
正確にはエルメロイU世が遠坂の後ろ楯になっているだけなのだが、時計塔内の政治力学的に言うと余り間違ってはいない。要は、遠坂がエルメロイの派閥に属している、という形が重要なのだ。
「頭は回るようね。その通りよ。アニムスフィアであるこの私が、エルメロイのところの魔術師に弱味を見せるわけにはいかないわ。だからミス遠坂に話すことはないの。貴方もくれぐれもこの話を言い触らさないように。一応、機密事項なんだから」
「……」
人類絶滅の危機に瀕してもまだ派閥争いに気を配るのか。思わず呆れてしまうが、まあ人間そんなもんだよなと思う程度に納める。
大方オルガマリーはまだ事が重大なものではないと思っているのだろう。自分達の力だけでなんとかなると思っているし、そうでなければならないとも思っているはずだ。だからそんな悠長なことを言っていられる。
本当に人類が絶滅したらどうする。危機意識を一杯に持っておけと口を酸っぱくして叱りつけてやりたかったが、ここはグッと堪えておく。言っても詮無きことである。
「話はわかった。人類の危機ともなれば、流石に我関せずを通すわけにもいかないだろう。オルガマリー・アニムスフィア、貴女の誘いに乗ろう。――条件はあるが」
「あら、聖杯戦争の覇者の協力が得られるのは有りがたいことだけど、無理なことを言われても頷けないわよ?」
「分かっている」
――あまりうだうだと話すのも好きじゃない。さっさと話を終わらせに掛かった。
大事なのは、無償で協力しないことである。
人間心理とは難しいもので、ことが重要であればあるほど何か対価を貰わねばならない。特に深い繋がりがあるわけでもない相手は、そうした対価を支払うことで相手を信頼、信用していくのである。
もし最初から見返りも求めずにいたら、間違いなく不気味がられ、信頼されること
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