逃げたら死ぬぞ士郎くん!
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マリーの父が聖杯を勝ち取り、恐らくは資金源として研究施設を獲得して成立したもの。つまりオルガマリーの父は聖杯戦争に参加し勝利していることになる。少なくとも冬木以外で、だ。
……この世界には、冬木の聖杯と同等か、それ以上の物が他所にあったのか? そしてそれを、オルガマリーの父が手に入れた、と?
有り得ない、とは一概に断定出来ない。平行世界は無限に存在する。俺がいるのがそういう世界だと考えることもできる。
だがしかし、冬木の大聖杯の基になったのは、アインツベルンの冬の聖女である。聖杯の術式も、それを見た英雄王が「神域の天才」と評したほどの完成度を誇る。そんなものが、他にもあったとは流石に考え辛いが、さて――
「――ちょっと、聞いてるのかしら? 衛宮士郎」
咎めるような女の声。それに、俺は思考を一旦打ち切った。袋小路に入り掛けていた思考をリセットしておく。今は悠長に思索にかまけてはいられなかった。考察は後でも出来ること。今オルガマリー女史から詳しい話を聞いているところであるのだし、そちらに集中するのが賢明だろう。
カルデアにスカウトしに来たとか、マスター候補になって欲しいとか、そんなことを突然言われても普通は事態を把握できないし、俺自身もカルデアの詳細な情報など遥か忘却の彼方だから、彼女から話を聞いておくのは大切なことだと思う。
俺は現在、ロンドンの喫茶店にいた。流石にイギリス、紅茶だけは旨い。
英霊エミヤとは違い、特に悪党以外からは恨まれていないし、外道な魔術師を独自に仕留めても、その研究成果自体は俺の保身のために時計塔に二束三文で売り払ったりしているため、魔術協会に目をつけられたりもしていない。
固有結界持ちであることも今のところは隠しきれているし、平気な顔でロンドンに居座っていてもなんら困るものはなかった。
時々遠坂凛を見掛けることはあっても、特に険悪にはならないし、せいぜい「たまには帰郷して桜に顔を見せてあげなさい」と小言を言われるぐらいだ。彼女も人生充実しているようだし何よりである。
そんな具合なもんだから、ロンドンを彷徨いていた俺が、あっさりとオルガマリーに捕捉されてもおかしくないわけであった。
俺は努めて冷静に銀髪の女――オルガマリーに対して切り返した。
「……ああ、もちろん聞いている。お前達が何者で、何を目的とし、なんのために俺に接触を図ってきたのか。聞き落としなくきちんと聞いていたとも」
言いつつ、俺は対面に座すオルガマリーと、その両脇を固めるように立っている男、レフ・ライノールとロマニ・アーキマンと名乗った男たちを見据えた。
ちなみに、衛宮士郎を演じなくなった俺の口調は、激した時の英霊エミヤに似ている。だからど
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