序「特異点F」
成し遂げたぜ士郎くん!
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うと試みると、俺が具体的なイメージを持っていなくても、その刃物やら投影元のオリジナルに込められた理念などへの共感、経験の憑依などが行えたのである。
まるで俺とは別に、本当の衛宮士郎が存在して、魔術専用の杖として俺の頭の中に存在しているような異物感があって、途方もない吐き気がしたが、便利だったのは間違いない。最初こそ俺の中の投影杖(と便宜上呼称する)は練度が低く、原作冒頭の衛宮士郎レベルだったが、俺が彼の到達点であるアーチャーのエミヤを知っていて、衛宮士郎の異能的な投影魔術の概要を知っていたためか、めきめきと魔術の位階を上げていった。
――じゃあ、なんで俺は最初から見たこともない宝具を投影できたのか――
そうなってくると、俺はある決断が出来た。自分の命がかかっているからと勇気を出し、最初期の衛宮士郎がこなしていた間違った魔術鍛練を行い、魔術回路の強度を高めはじめたのだ。
無論、俺がやれば一発でミスし、死んでしまっていただろうが、生憎俺の頭の中には投影杖がある。俺が魔術を行使しているわけではない以上ミスの恐れはほとんどなかった。それほどまでに、俺は投影杖を信用、あるいは過信していたのだ。
――信頼ではない。当たり前を、当たり前になぞっただけだ――
軽率だったと後から思ったが、まあ実際に魔術回路の強度を高めることには成功したと思う。それに、何故かは知らないが、自殺紛いの魔術鍛練を積んだ結果、本来の衛宮士郎同様の凄まじい集中力を得ることができ、副次的にあの驚異的な百発百中の弓の腕を得ることが出来た。
「当てるのではなく、既に当たっている」。本当の衛宮士郎がそう言っていたが、今ではその感覚がよくわかる。投影杖におんぶにだっこな現状だが、自身の能力が高まる感覚には不覚にも高揚する物があった。
俺は魔術の鍛練に平行して体を鍛えつつ、あることを考えていた。
どうすれば俺はこの先生きのこれるのか。どうすれば、どうすれば。――うだうだと過去の思考を垂れ流しても意味がない。結論として俺が選択したのは「衛宮士郎の生き方を投影すること」だった。
先の分からぬ未来である。中身平凡な俺が色々考えたって、衛宮士郎のような未来を得ることができるとは思えない。幸い、俺は衛宮士郎が生き残るための道筋を知っているし、忘れないように記録もしている。投影杖のおかげか副作用か、他者の物真似は得意だった。
不可能ではない、と俺は判断し。実際にブラウニーのように活動して、衛宮士郎という壊れた生き方を実践できたと思う。
――周りの人間の反応がおかしかった――
それはとんでもなく、苦痛だった。演じる内に、それが本当の生き方なのだと錯
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