第六十三話 再起
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きたいのですが」
フローラさんのその言葉にブルジオさんの手が不自然に震え、紅茶のカップが倒れた。
「火傷は大丈夫ですか、ご主人様」
「大丈夫だ、クラウド。幸いにも溢れたのはテーブルの上だけだ。わしにはかかっておらん」
「わかりました。ではお下げいたします」
クラウドさんはテキパキとした手つきで溢れた紅茶や倒れたカップを片付けると、奥へと下がっていった。
「さて、石像の事でしたかな。いいでしょう、あんなものでよろしければお譲りしますよ」
石像について語るブルジオさんの声には冷たい憎悪のような禍々しい感情が込められていた。何故ここまでの強い感情があるのかわからないけれどきっと過去に辛い何かがあってそれに少なくともアベルの石像が関わっているのはこれまでの態度で察する事が出来た。
「先程からどうも石像に対しての態度が気にかかるのですが差し支え無ければ教えてくれませんか?」
ブルジオさんの石像に対する様子をフローラさんも気になっていたのだろう、ついにに切り出した。
「……数年前の話ですよ。私達には愛する息子がいました。ジージョという一人息子です。息子がいた日々はとても楽しく幸せでしたよ。ええ。ですが……」
ブルジオさんは表情を険しくし、杖を勢いよく握りしめた。
「ですが、魔物達が息子を連れ去った……!あの石像は守り神だというから買ったのに何の役にも立たなかった!あの石像は考えるだけでも忌々しい!」
それを聞いてこの屋敷の荒れ具合に、そして何よりアベルの石像に対する様子に納得がいった。一人息子の危機にどうする事も出来なかった自分自身に対してや突如襲いかかった理不尽に対するやり場のない怒りをアベルの石像に向けている。でも、アベルの石像を見てしまうと辛い過去を思い出してしまうからなるべく意識しないようにしているんだ。
「……石像は噴水の近くの茂みにあります」
私達は外に出て、茂みをかき分けた。あちこち雑草が大量に伸び放題で中々苦労したけどついにアベルの石像を見つける事が出来た。見た感じ特に風化している箇所は無さそうで安心した。
「さぁ、タバサ。その杖を」
「はい、先生」
タバサがストロスの杖をかざすと、杖に埋め込まれている宝玉が輝き始めた。青い光の粒がアベルの体に降り注ぎ、物言わぬ石像から人間へとその姿を元に戻していく。宝玉が光を放ち終える頃には、そこには元のアベルが横たわっていた。
上半身だけ体を起こしたが呪いが解けたばかりでまだ何があったのかよくわかってないのだろう、目を瞬かせたり、辺りを見渡している。
「「お父さん!!」
レックスとタバサがアベルに勢いよく抱きつく。
「本当に良かったですわね……」
涙を流しながらフローラさんは笑っていた。
「うん、良かったです。本当に、本当に……」
そして、私も
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