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泡沫の島
泡沫の島 4話「ユキ」
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声を掛けていた。

 「んい?」

 サヤさんが振り向く。その顔は申し訳なさそうな、暗い表情だった。

 ……そんな顔、見たくないです。サヤさんにはずっと笑っていて欲しい。

 だから私は、言葉を紡ぐ。願わくば、彼女の笑顔を取り戻せればと。

 「……サヤさんは、めちゃめちゃ面白いです。見ていてホント飽きません。」

 「……あたし、今バカにされてる?」

 「いえ、そんな気はちょっとしかありませんよ?」

 「ちょっとはあるんだ…。」

 むぅ、ちょっと失言だった。自分の口下手を呪う。でも、サヤさんに笑顔を取り戻して欲しくて、再度チャレンジ。

 「えーと、そんなこと言いたい訳じゃなくてですね…。私はいつも、サヤさんの明るさに何度も助けられてるんです。」

 「助ける?あたしが?」

 そう、何度も助けられた。
 
 ”笑う”というものを知らなかった私にとって、サヤさんの笑顔の何と眩しいことか。その笑顔を見ただけで、私の不安なんかはあっという間に消されてしまった。

 その他にも、色々面白い行動を取ってくれたり、一緒にカズっちの悪口を言い合ったり…全てが私にとって新鮮で、そして、楽しかった。

 「えぇ、それはもう、一人暮らしにとっての夜の半額シール並に。」

 「ごめん、その例えはいまいちよくわからない。」

 それは残念。私も実際行ったことはないですけどね。
 
 「サヤさんはよくやってくれています。私には無いものをサヤさんは持っています。ホント仲良くなれて超ラッキーって思ってます。ですから…。」

 なるべく慎重に言葉を選ぶ。そして、自然に浮かんだ『笑み』と共に、私は言った。
 
 「何も、心配するようなことなんてないんですよ?」

 「…………。」

 あれ、ノーリアクション?私、もしかしてまた変なこと言った?

 「……えー、と…サヤ、さん?」

 「……ゅ……ゅ…。」

 ゆ?湯?You?私に風呂に入れと?サヤさんすいません今回はいつも以上にわかりません。

 「ユキぢゃぁぁぁぁぁん!」

 「うぐはぁ!」

 突如サヤさんが体当たりを敢行。鳩尾にクリーンヒット。苦しみながらも私はナイスタックル、と言い掛け、

 「……うっわ。もしかして泣いてます?」

 サヤさんがめっさ泣いていた。……何で?

 やばい。私的に超やばい。まったくどーしたらいいか分かりません助けてくださいシュウ先生。

 悩んでいるうちにサヤさんの方から口を開いた。

 「ひっく、えっ、うぇっ。あた、あたし、邪魔じゃない?足手まといじゃない…?」

 落ちつけ私。頑張れ
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