泡沫の島 3話「カズ」
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「だろーがよ。んな心配してる暇あったら、俺に演習で勝つ方法でも考えるんだな。ま、無理だろうがな。」
そう言って部屋へと踵を返す。角を曲がったところで、また会話が始まったのが気配で感じられた。その話の端々が耳に届いてくる。
「……よ、無理だって…。」
「…もよ、……かしたら化物みたいな奴で……かも…。」
「…だぜ?…ズさんが…るのも想像…ないだろ?」
「…にせよ、何か起き………けどな…。」
「…………チッ!」
俺は大きく舌打ちすると部屋へと戻っていった。
(ったく…どんな奴か知らねぇが、どーせ大したことねぇくせに…。)
俺は部屋に付くとベッドに全身で飛び込み、大きな苛立ちと、僅かな不安を抱きつつ、眠りに落ちた。
それから数日後、予定通り新しい入居者が担当教官と二人でやってきた。
「これからこの施設に配属された狩野だ。こっちはシュウ。二人共々、よろしく頼むよ。ほらシュウ、挨拶を。」
「……よろしく。」
そう言って頭を下げる奴の第一印象は、噂とは似ても似つかないほど平均的な体格をしていた。おとなしそうな少年、というイメージで、その場にいた誰もが噂はデマだったと感じ、少し弛緩した雰囲気になる。
少年は誰にも目を合わせようともせず、その瞳には何も映っていないように見えた。
「えーと、カズ君っていうのは誰かな?」
「……俺、です。」
挙手する。気の良いお兄さん、と言った教官としては珍しいタイプの狩野はこちらに視線を向けた。
「君か。えーと、たぶん君のグループに入ることになると思うから、よろしく面倒見てやってくれ。」
「こ、こいつがですか!?」
俺のグループは基本的に戦闘に特化したグループだ。能力次第では体格も何も関係ないとはいえ、こんなひょろっちい奴が?
「それでは解散だ。各々、一旦自室に戻れ。」
それで解散となり、それぞれが部屋に戻っていく。シュウと呼ばれた少年は終始、顔を下に向けたままただ黙っていた。
「拍子抜けだよな。件の問題児があんな奴だったなんてさ。」
「そーそー。噂なんて所詮噂だよなー。」
「でもよ、カズさんとこのグループってことは、あいつも白兵戦系の能力なのかな?」
「ははは、せいぜい足を強化して速く走れる程度じゃねーの?」
「それもそうだな。ハハハハハハ。」
誰もがそう思っていたし、全員が彼に対する興味を無くしていった。もちろん、俺も多分に漏れず無くしていた。
しかし、その数日後、その場にいた誰もが忘れることが出来なくなる事件が起きる。俺
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