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勇者たちの歴史
西暦編
第九話 リミテッド・オーバーA
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上で頼みを聞いてくれるとありがたい」
「もしや……まだバーテックスが残っている、とかでしょうか?」
「勘が鋭いな、君は」

 驚きを顔に浮かべたまま、男は右手をまっすぐ伸ばした。
 人差し指は大橋の先、本州のある方角を指している。それがいったい何を示しているのか。
 若葉は懸命に目を凝らして、やがて怪訝そうに首を傾げた。

「……何も見えませんが」
「まだ本州側だからな。橋を辿り始めてはいるんだが、大型バーテックスが接近しつつある」

 猶予は五分程度だ、と若葉に見えない敵の到達時刻を告げる。

「その間に、避難誘導と連絡を頼みたい」
「……頼みごとの内容は分かりました、だがわざわざあなたが残る必要もないのでは?」

 男は顔色一つ変えず、当然のように言った。

「物見には眼は必要だ――――万が一、奴の足が速まったなら足止めもいる」

 その一言で、なんとなく若葉は目の前の人間のことが分かった気がした。
 そして、次にかけられるだろう問いも――――その返答はもう決まっている。

「ここは私に任せてくれ。君は、四国に戻って、」
「私も――――力になるはずだ」

 スマホを取り出す。
 通話機能を開きながら、呆気にとられた様子の勇者代理に告げる。
 
「四国を護る勇者として、乃木家に生まれたものとして――――バーテックスを他人任せにするわけにはいかない」

 
 
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