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勇者たちの歴史
西暦編
第九話 リミテッド・オーバーA
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「――――投影、装填(トリガー・オフ)

 なぜ、眼前のバーテックスがあの大英雄の技量を模倣しているのか、士郎には分からない。
 打ち合うたび、弾くたびに洗練されていく技能が、過去に垣間見たバーサーカーの動きと当てはまった。ただそれだけの理由だが、士郎の中には奇妙な確信があった。

『コレ』は、贋作だ。
 バーサーカーの一面だけを映し出した、出来の悪い模造品。

「■■■■■■■■……ッ!」
 
 一秒、二秒、視界一杯に白い巨体が広がる。
 振り下ろされる一撃を無視し、寸前まで敵の正体を見極める。
 脳裏に描く軌跡は、急所を抉る神速の八撃。
 ここまでくれば出し惜しみはない。残る魔力の全てを注ぎ込み、宝具に刻み込まれた英霊の絶技を出力し、八つのポイントに狙いを定める。
 
全工程投影完了(セット)ーーーー是・射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)
「………………■、■■……!?」

 士郎の持つ手段の中で、最上級の威力を誇る連撃。
 踏み込みと共に放たれた八筋の斬撃は、音速の標的を容易く砕き伏せる。大小様々な破片になったバーテックスは、あっさりと大気に溶けて消滅した。

「これで…………ッ、最後、か………?」

 突き立てた大剣に寄り掛かって息を吐く。
 一時間ほど前はバーテックスに溢れていた大橋も、今は静寂に包まれている。二年前半もの間、絶えずバーテックスと交戦してきたことを思うと、あの白い姿が一切見えないことがかえって不気味に思える。
 
「藤ねえ、遠坂や桜は、もう四国の中か」
 
 冬木の住民が転移してから、それだけの時間は経過している。
 集団パニックにでも陥っているならそうも限らないが、士郎の強化した視力でも逃げ遅れたような人影は――――、

「…………あれは、」

 弓兵の真似事をしている身として、眼の良さには昔から自信がある。
 見つけた青と白の装束には見覚えがあった。
 
 

 若葉の戦闘は、まさに修羅のようだった。
 精霊――源義経の力で得た機動力を最大限に発揮し、視界に入ったバーテックスを手当たり次第に両断した。周囲に群がる小型の網の目をすり抜け、強引に押し通り、斬り開き、怨敵を次々と消滅させていった。
 だが、いつまでも一方的な戦いにはならない。
 勇者といえど、若葉は人間だ。戦いが続く限り消耗し、集中は乱れ、次第に危うい場面が増えていく。

「ぐ、ぎ……ッ!? この、、!!」

 同時に襲い掛かった五体のバーテックスを斬り払った直後、右足首に激痛が走った。
 逆手に握った刀で、食らいついた小型を突き殺す。だが、体勢を整える間もなく今度は大質量に任せた体当たりが迫り来る。

「がはッ……!」

 構えた刀の上
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