西暦編
第九話 リミテッド・オーバーA
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「――――投影、装填」
なぜ、眼前のバーテックスがあの大英雄の技量を模倣しているのか、士郎には分からない。
打ち合うたび、弾くたびに洗練されていく技能が、過去に垣間見たバーサーカーの動きと当てはまった。ただそれだけの理由だが、士郎の中には奇妙な確信があった。
『コレ』は、贋作だ。
バーサーカーの一面だけを映し出した、出来の悪い模造品。
「■■■■■■■■……ッ!」
一秒、二秒、視界一杯に白い巨体が広がる。
振り下ろされる一撃を無視し、寸前まで敵の正体を見極める。
脳裏に描く軌跡は、急所を抉る神速の八撃。
ここまでくれば出し惜しみはない。残る魔力の全てを注ぎ込み、宝具に刻み込まれた英霊の絶技を出力し、八つのポイントに狙いを定める。
「全工程投影完了ーーーー是・射殺す百頭」
「………………■、■■……!?」
士郎の持つ手段の中で、最上級の威力を誇る連撃。
踏み込みと共に放たれた八筋の斬撃は、音速の標的を容易く砕き伏せる。大小様々な破片になったバーテックスは、あっさりと大気に溶けて消滅した。
「これで…………ッ、最後、か………?」
突き立てた大剣に寄り掛かって息を吐く。
一時間ほど前はバーテックスに溢れていた大橋も、今は静寂に包まれている。二年前半もの間、絶えずバーテックスと交戦してきたことを思うと、あの白い姿が一切見えないことがかえって不気味に思える。
「藤ねえ、遠坂や桜は、もう四国の中か」
冬木の住民が転移してから、それだけの時間は経過している。
集団パニックにでも陥っているならそうも限らないが、士郎の強化した視力でも逃げ遅れたような人影は――――、
「…………あれは、」
弓兵の真似事をしている身として、眼の良さには昔から自信がある。
見つけた青と白の装束には見覚えがあった。
若葉の戦闘は、まさに修羅のようだった。
精霊――源義経の力で得た機動力を最大限に発揮し、視界に入ったバーテックスを手当たり次第に両断した。周囲に群がる小型の網の目をすり抜け、強引に押し通り、斬り開き、怨敵を次々と消滅させていった。
だが、いつまでも一方的な戦いにはならない。
勇者といえど、若葉は人間だ。戦いが続く限り消耗し、集中は乱れ、次第に危うい場面が増えていく。
「ぐ、ぎ……ッ!? この、、!!」
同時に襲い掛かった五体のバーテックスを斬り払った直後、右足首に激痛が走った。
逆手に握った刀で、食らいついた小型を突き殺す。だが、体勢を整える間もなく今度は大質量に任せた体当たりが迫り来る。
「がはッ……!」
構えた刀の上
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ