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勇者たちの歴史
西暦編
第九話 リミテッド・オーバーA
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 白い巨人が迫る。

「……ッ、がァッ……!?!」

 ボロ屑のような守護者を撥ね飛ばし、大地を踏み鳴らして進撃する。

「……ぅぉ、ぉぉおおおああああああああ……ッ!!」

 もはや神樹の勇者など眼中にない。
 唐突に現れた無防備な人間たちを殺戮する為に、バーテックスは突撃を繰り返す。

「――――投影、開始(トレース・オン)

 恐怖に震える人間たちに殺意を振りまく怪物はしかし、

「――――投影、装填(トリガー・オフ)

 幾度の突撃を経ても、

赤原猟犬(フルンティング)……ッ!」

 立ち塞がる魔術使いの守護を、未だ突破できずにいた。

「はぁ―――――ッ、だあ――――――ッ!」
「■■■■■■■■■■――――!」

 無造作に振るわれた魔剣が、音速に届こうという剛撃を真正面から迎え撃つ。
 それは、無謀な剣戟だった。
 暴風さながらに荒れ狂う怪物と、魔術使いだが人間である衛宮士郎。種族どころか、存在そのものからして異なる両者の間には、膂力においても絶望的なまでの差が存在する。
 まともに切り結べば、まず叩き潰される。
 否、音速に迫るバーテックスの動きは既に人間が対応できる領域ではない。
 
「……■■■■、■■■■……!?」
「ぐッ……、ぁ……!!」
 
 だが、本来勝負ですらない力比べは、士郎の『反則』によって確かに拮抗していた。
 ただ振り回すだけで的確な斬撃を放つ、北欧の魔剣――赤原猟犬(フルンティング)。そして、宝具から読み取った担い手の筋力を複製し、片腕を封じられながらもバーテックスの猛攻を凌ぐことに成功している。

「■■■■■■■■……ッ!」

 とはいえ、士郎にも余裕などありはしない。
 慣れない武具を用いた戦闘では、普段の術理は当てはまらない。
 身体は消耗し、魔力も底を尽きかけている。聖杯のバックアップを受けられない今、少し前までのような魔力に任せた投影の乱発も難しい。
 そして、最善手を打ち続けたとしても――――剛撃により、投影宝具は限界を迎える。

「く、そッ……、投影、開始(トレース・オン)

 再び創り出される黒い魔剣。
 普段の干将莫耶ほどスムーズではないものの、紙一重のタイミングで投影された赤原猟犬(フルンティング)が致命の一撃を弾き返す。渾身の蹴りが巨重を宙に押し上げ、バーテックスは再び振り出しへと押し戻された。
 状況は、良くはない。
 進化型の目標は、荷物という重りを持った無力な人間たちだ。脅威度よりも数を優先するバーテックスにとって、士郎は壊れにくい障害物となんら変わりないのだろう。
 だからこそ、バーテックスの猛攻は苛烈を極めた。
 突進と剛撃をただ繰り返す。それを、音速に迫
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