西暦編
第九話 リミテッド・オーバーA
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後
白い巨人が迫る。
「……ッ、がァッ……!?!」
ボロ屑のような守護者を撥ね飛ばし、大地を踏み鳴らして進撃する。
「……ぅぉ、ぉぉおおおああああああああ……ッ!!」
もはや神樹の勇者など眼中にない。
唐突に現れた無防備な人間たちを殺戮する為に、バーテックスは突撃を繰り返す。
「――――投影、開始」
恐怖に震える人間たちに殺意を振りまく怪物はしかし、
「――――投影、装填」
幾度の突撃を経ても、
「赤原猟犬……ッ!」
立ち塞がる魔術使いの守護を、未だ突破できずにいた。
「はぁ―――――ッ、だあ――――――ッ!」
「■■■■■■■■■■――――!」
無造作に振るわれた魔剣が、音速に届こうという剛撃を真正面から迎え撃つ。
それは、無謀な剣戟だった。
暴風さながらに荒れ狂う怪物と、魔術使いだが人間である衛宮士郎。種族どころか、存在そのものからして異なる両者の間には、膂力においても絶望的なまでの差が存在する。
まともに切り結べば、まず叩き潰される。
否、音速に迫るバーテックスの動きは既に人間が対応できる領域ではない。
「……■■■■、■■■■……!?」
「ぐッ……、ぁ……!!」
だが、本来勝負ですらない力比べは、士郎の『反則』によって確かに拮抗していた。
ただ振り回すだけで的確な斬撃を放つ、北欧の魔剣――赤原猟犬。そして、宝具から読み取った担い手の筋力を複製し、片腕を封じられながらもバーテックスの猛攻を凌ぐことに成功している。
「■■■■■■■■……ッ!」
とはいえ、士郎にも余裕などありはしない。
慣れない武具を用いた戦闘では、普段の術理は当てはまらない。
身体は消耗し、魔力も底を尽きかけている。聖杯のバックアップを受けられない今、少し前までのような魔力に任せた投影の乱発も難しい。
そして、最善手を打ち続けたとしても――――剛撃により、投影宝具は限界を迎える。
「く、そッ……、投影、開始」
再び創り出される黒い魔剣。
普段の干将莫耶ほどスムーズではないものの、紙一重のタイミングで投影された赤原猟犬が致命の一撃を弾き返す。渾身の蹴りが巨重を宙に押し上げ、バーテックスは再び振り出しへと押し戻された。
状況は、良くはない。
進化型の目標は、荷物という重りを持った無力な人間たちだ。脅威度よりも数を優先するバーテックスにとって、士郎は壊れにくい障害物となんら変わりないのだろう。
だからこそ、バーテックスの猛攻は苛烈を極めた。
突進と剛撃をただ繰り返す。それを、音速に迫
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ