暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン〜性別不詳の槍術士〜
2.開幕・回り始める歯車
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に消えた男を呪い、叫んでいる。

 茅場晶彦から『プレゼント』と称し、渡されたアイテム『手鏡』

 それにより顔を初めとした身長、体重、体の部位を始めとした全てが現実のものと置き換えられた。

 なぜ?どうして?

 疑問から現れる声は先ほどからどんどん大きくなり、一種の狂気にも思える雰囲気を形成していた。

 その行為が、全く意味のない行為と知らずに、何も変わらない無駄の積み重ねと知らずに。
 拳を握る。先ほどまでの太く、凛々しい腕じゃない。どこまでも白い華奢な腕。背は少しだけ縮み、髪は先ほどまでの短髪ではなく、腰まで届くロングヘア。そして顔は、どこまでも女らしくあった。

 もうこの顔は先ほどまでここにいた『サク』ではない。ここにいるのは紀野枝真人(きのえまきと)。俺が最も長く付き合い、最も忌み嫌うおれ自身の顔。

「……やれるものなら、やってみな」

 誰が負けてやるものか。

 誰か逃げてやるものか。

 誰が泣いてやるものか。

 恐怖は、ある。先ほどから喉の水分を否応なく吸い取っていく。どうしてこうなったのか。どうして俺がこんな目に遭うのか。そこまで悪いことをしたであろうか。

 足は先ほどから震えが止まらない。頭の中はある筈のない心臓の音がガンガンと鳴り響き、霞むことのない無い視界はぼやけはっきりとしない。このまま気を失えば、全てが夢であったなんてご都合主義全体の物語が巻き起こるかもしれない。このまま宿に篭り、誰かがクリアするまで待てばリスクを冒すことなく生き残れるかもしれない。そんな甘い考えが。頭を駆け巡る。

 しかし、けれど、だからこそ出来ない。してしまえば俺は負ける。この顔に、この運命に、こんなものを押し付けた人ならざる何かの意思に。漠然とした不安。堕ちることへの、腐る事への不満。そんな人間になることを認められない。認めたくない。

 強くなければ生きていけない。とは、誰の言葉だったか。少なくともこの状況では、的を得ている言葉。だからこそ、俺は――

「やれるものならやってみな!」

 叫ぶ。天に届けと。聞こえるはずのないこの計画の実行者へと。

 奮い立つように。絶望に負けないように。この狂気に抗うように。

 誰も彼もが自分の声を、意思を認識しないこの世界で。

 彼らにとって俺は有象無象の一人であり、今は俺のようなものにかまっている暇など無い。それよりもこの現状を変えるために怒鳴り続けている。それが実を結ぶかどうかは別として……。

 俺は広場を離れるように歩き出した。

 決意が鈍らないうちに歩き出さなきゃいけない。足が動くうちに戦わなくちゃいけない。

 そうして俺は、戦場へと脚を運んだ。

 これが、俺ことサクのなりそめであり。ただ
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