1st season
13th night
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らタバコの火を消すと、立ち上がって喫煙ブースを片付け始めた。いつもここだけは、他の従業員に清掃だけやらせて、片付けは自分でしている。青年の他にも、こういう時間に来る客の相手をするためだと不死鳥が漏らしたとか。
「奴との結果報告、楽しみに待ってるよ」
「そういうお前こそ、「R4A」にケンカ吹っ掛けるんだろう?無茶だけはするなよ」
「それは約束できねぇなぁ。今の俺じゃ、どんな無茶しても勝てるかわかんねぇよ、あのバケモンGT-Rには」
同日、日付が変わる頃、辰巳第一PAにてグレーラビットが火をつけたタバコをくわえ、ベンチに腰かけた。湾岸合流からベイブリッジへ抜けるルートは、彼なりに色々掴めた様子。
「……冗談じゃねぇ……」
まるで激務でくたびれた若いサラリーマンのように、思考が出口の見えない迷路をさ迷っている。吐き出す煙が闇の中へ浮かんで消える様子を眺めながら、彼はかつて投げ掛けられた課題の答えを求めて空を見上げた。
「……あの野郎が抜かしてやがった二台……さっさとケリをつけてぇんだかな……」
今乗っているNSX−Rを借り受けた青年から告げられたターゲット、C2湾岸・ベイブリッジルートに現れるドライバーではトップと言われている、赤いFDと赤いS15。それっぽい車を見つけては吹っ掛けてきたものの、どれも彼からすれば『本物』とは思えないレベルの相手しかいなかった。
「……どうも」
「……アンタか」
「調子は……その様子だと、行き詰っているようですね」
グレーラビットはその質問に答えない。見ればわかるだろうと言わんばかりに。
「焦る必要はありません。まだ会う時ではない、そういうことです」
「……その二台と、連絡つくのか?アンタは」
「ええ、まぁ。つけようと思えば。でなければわざわざターゲットに指定はしませんよ」
「なら……」
「でもそれでは意味がない。予定されたバトルなら、あなたに預けたNSXが有利すぎる」
あくまでエンカウントバトルの中で勝つのが条件、と青年は言い切った。
「心配せずとも、いずれ出てきますよ。ただ彼らにも生活があり、走るリズムがある。慌てても何にもなりません」
「……そうかよ。まぁ、今日はもう帰るわ」
吸いきった煙草をガラ入れに捨て、グレーラビットはNSXに乗る。求める相手はいまだ見えずとも、無慈悲に時は過ぎるのみ。目標が見えない中走っていることもまた、彼の思考が晴れない要因なのであろう。、
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