十九 開演のブザーが鳴る
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ん」
ナルの強い意志を受けて、チヨの唇が笑みを象る。
彼女の青い瞳の奥に、前途ある未来のヴィジョンが垣間見えた。
「くだらぬ年寄りどもがつくった、争いの絶えぬこの忍びの世界に」
ナルの手と己の手を重ね合わせる。ナルのチャクラを借りながら、チヨは双眸をゆるゆると細めた。
「波風ナル…お前のようなやつがいてくれて嬉しい」
砂と木ノ葉。いがみ合っていた別里同士を繋ぐ架け橋。
これから先の未来を思い描いて、チヨはナルの瞳を真っ直ぐ見据えた。
「我愛羅をよろしく頼むぞ」
「おうっ!」
チヨの言葉を受けて、ナルは威勢よく頷くと「でもばぁちゃんもだってばよ!オレとばあちゃんと…皆で我愛羅を支えてゆくってば」とにっこり笑顔を浮かべる。
禁術のリスクをいのから聞いていながらも、それでも我愛羅も、チヨでさえも、ナルは諦めていなかった。
「オレってば我儘だからさ。最後まで希望は捨てないんだってばよ!!」
忍びの世界に身を置く身、何を甘ったるいことを、と言われるかもしれない。
忍びに相応しくないのかもしれない。
それでも希望を捨てないナルの発言を耳にして、チヨの目が大きく見開いた。
ナルは渾身の力を込めて、手にチャクラを宿す。いくら膨大なチャクラを持つ身とは言え、チャクラを放出し続けるには限度がある。
ナルは瞳を強く閉ざした。緊迫めいた空気をよそに、白い蝶が呑気に我愛羅の鼻先に止まって、美しい翅を休めている。
ナルの腹の奥で、狐の唸り声が聞こえた気がした。
罅割れた大地。
草原とは打って変わって荒れ果てた土地に、ひとりぼっちの子どもがいた。
赤い髪を腕の中に押し込めて、この世から消えて、無くなってしまいたいというように、縮こまっている子どもがいた。
やがて、その子の肩に、何かあたたかいものが触れる。視界の端に、白い蝶が止まっていた。
いや、それは幻だったのだろう。
我愛羅は顔をあげた。
泣き過ぎて腫れぼったい瞳に、金色の髪が垣間見えた。
「帰ろう、我愛羅」
《おいこらクソ狸》
我愛羅の体内の奥の奥で縮こまっている存在。
ナルの手から注がれるチャクラを通して、その存在に話しかけた九尾はそいつを挑発する。
《お前はこのワシに負けっぱなしでいいのか?》
焦
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