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憑依先が朱菜ちゃんだった件
第15話
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ろう?実際はほんの僅かな時間しか経っていないのだろうが、両者の行く末を見届けるしかできぬ我らにはとても長い時間が経っている様に感じた。

木製の枷と龍に拘束された父王はリムル殿に身体を捕食されながらも『自己再生』の技能(スキル)で体を癒し、特殊技能(ユニークスキル)飢餓者(ウエルモノ)』で捕食し返しているが、捕食と再生の速度が圧倒的に劣っている様で一方的な流れとなっている。

恐らく、オレだけでなくこの場に居る全ての豚頭族(オーク)が父王の加勢に入りたいと思っていることだろう。だが、その様な行動を取ることは許されない。

何故ならば、俺達の前には敵将と同等の存在である武人―――大筒木紅麗という名有り(ネームド)の魔人と敵将をも凌駕し父王を物理的に仕留めかけた女傑―――大筒木朱菜という魔王にも匹敵する名有り(ネームド)の魔人がいるからだ。

特に大筒木朱菜という魔人は我らのことを威圧している。我等が動けば彼等も動き、我等の同胞を一方的に蹂躙するつもりなのだろう。ここまで進軍した15万の同胞の中には老人から赤子に至る非戦闘員も含まれている。

同胞が全滅しかねない未来への恐怖か、それとも非戦闘員を巻き込む訳にはいかないという僅かばかりに残っている理性によるものか。兎も角、我等は誰一人として動けずにいた。

そして、ついに父王の命は最後の時を迎える。その体は骨に食べ残しの様な肉が幾ばくか付いている所まで喰らい尽くされ、父王はその場に倒れ込んだ。そして―――


「魔王ゲルド、お前の全ては俺が喰らう。後は俺に任せて安らかに眠れ」


リムル殿がそう告げると同時に父王は動かなくなり、その体はリムル殿に喰らい尽くされた。その瞬間、オレには骨しか残されていなかった父王の顔に安らぎの笑みが浮かんでいた様に見えた。


「……父王よ。漸く重責(おもみ)から解放されたのですね……」


父王の重責を知っていながら、それを共に背負うことすらできなかったオレは、父王が亡くなったことによる同胞の嘆きの声とリムル殿の勢力の歓声を耳にしながら父王の冥福を祈った。

その後、我ら豚頭族(オーク)とリムル殿の勢力の間にジュラの森の管理者である樹妖精(ドライアド)が現れ、翌朝に此度の一件を収束する為の話し合いを行うと宣言し、各種族は数名の代表者と共に一族の意見を纏め、参加する様言ってきた。

敗北した我ら豚頭族(オーク)には不参加という選択肢はない。また、多くの他種族を喰らった我らが無罪放免となることもないだろう。

行ったことが詫びて許されることではないと承知しているが、同胞を根絶やしにされる様な話になった場合、虫のいい話ではあるが父王の腹心であったオレの首1つで容赦して貰える様嘆願してみよう。



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