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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
得たもの、失ったもの
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らしてきたあの時に砕けてしまっていた。ずるずると這ってこちらにやってくるその姿に我愛羅は歯を食いしばる。だめだ、と自分に言い聞かせた。疑問符に埋め尽くされて、埋め尽くされて我愛羅はいずれ自分が存在しているのかどうかわからなくなってしまう。そんなのは嫌だ。消えたくない。存在していたい。
 僕を。僕を見て。
 ――消えない……、消えない……、消えて、たまるか……ッ
 淀んだ水底は息苦しい。吐いた息が泡になって消える。だめだ、もう一度自分に言い聞かせる。消えたくない。消えたくない。存在していたい。
 消えたくない!

「く、くるな……!」

 我愛羅が声をあげる。それでもナルトは這って進み続けた。

 +

ずっとずっと、里の皆が嫌いだった。
自分の中に九尾がいると知り、そして自分を認めてくれる人が増えた今だからこその考えだが、きっと彼らに悪意はなかったのだと思う。大災害を起こした化け物を宿した子供だなんて、もしかしたら自分だってあまりお近づきにはなりたくなかったかもしれない。
いなくなれ化け物。そう呟かれる言葉の数々に涙を流しながら、悲しみながら皆を恨み続けていた。
きっと我愛羅もそうだったのだろう。我愛羅は悲しみ、恨み、憎み、怒り、そして狂気に染まっていった。ナルトがあくまで見てもらいたいと、皆に認めてもらいたいと思い悪戯をしだしたのとは対照的に、我愛羅は自分が存在していることを実感できればいいと、人を殺し始めた。 
一人は『みんな』に認めてもらいたいと望み、そして一人は『自分』を実感したいと望んだ――
 白の言葉が思い出される。彼が父親に殺されかけ、父を殺したその時、彼は誰にも存在を必要されなくなることが一番悲しいことだといっていた。そんな時彼を必要としてくれた再不斬が、白は大好きで、だから彼を死ぬまでずっと守り続けたのだ。
 自分も何度も思ったことがある。自分の存在している意味がわからなくなって、数多もの疑問符から逃げ出そうと必死になって。それでもある偶然からチョウジやシカマル、キバとちょっと仲良くなって、サクラが好きになって、サスケの孤独を目にして、イルカに守られて。沢山の繋がりがあったからこそナルトは疑問符を打ち払う一つの感嘆符を掴み取った。
 火影になって、皆を認めさせてやる! という、感嘆符。
 今では感嘆符は数え切れないくらいに増えている。疑問符はもうどこにもない。サクラを守る、サスケに勝つ、カカシを越す。数多もの決意を秘めた感嘆符は、今も増殖を続けている。
 我愛羅もきっと、自分の存在している意味がわからなくなったことがあったのだろう。だからこそ人を殺すことでその意味を探し出そうとした。疑問符に溺れそうになって、必死で掴み取った感嘆符が人を殺すことで自分の生を実感すると、そういった歪んだものであったから
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