第四章
[8]前話
追放にしたテュエステスをさらに追ったが彼の子を身籠っていた女を自らのものにしてその女が産んだその子をアイギストスと名付け自身の子として育て周りの者達に言った。
「アイギストスだが」
「はい、あの方を育てておられますが」
「どうしてでしょうか」
周りの者達は自分達の主の性格をもう疑っていなかった、そのうえで問うた。
「王としては」
「どうお考えなのでしょうか」
「テュエステスを討たせたいのだ」
また魔物の如き笑みで言った。
「あ奴を自分の子に殺される様にしたいのだ」
「だからですか」
「あえてアイギストス様を育てておられる」
「そうされていますか」
「そうだ、あ奴は自分の息子に殺されて人生を終えるのだ」
悪意に満ちた笑みで言うのだった、そうしてアイギストスを育て彼が成長すると実際に居場所を突き止めていたテュエステスのところに彼を送り込んだ。
そうしてテュエステスを殺そうとしたが肝心のアイギストスが真相を知っ逆にミュケナイに乗り込んでだった。
アトレウスを殺そうとしてきた、アトレウスはこの事態に慌てて周りの者達にアイギストスを討てと命じたが。
誰も従わなかった、むしろ道を開けて彼を案内する程だった。そうしてアトレウスはあえなく殺されたが。
この顛末をオリンポスから見てだった、ゼウスはヘラに言った。
「ああなるとはな」
「思っておられましたか」
「あそこまで無道だとな」
それならというのだ。
「ああなることも当然だ」
「だからですか」
「以前言ったのだ」
「あの者を助けるのはあの時限りにすると」
「そう言ったのだ。こうなることはな」
まさにというのだ。
「わかっていた、誰が無道を極めた者の為に動くか」
「魔物と変わらなくなった者に」
「憎いといえど人にその子の肉を食わせるなぞな」
「無道にも程があります」
ヘラも眉を顰めさせて言った。
「あまりにも」
「そうした輩を誰が助ける」
「そして誰が忠誠を誓うか」
「自分もそうされるかも知れないとも思うしな」
その無道を嫌うだけでなくだ。
「だからだ」
「ああなることはですね」
「わかっていた、あの男は自身の甥に殺されたのではない」
そうでなく、というのだ。
「自らに殺されたのだ」
「その無道さにですね」
「そうなったのだ」
語るゼウスの顔も嫌悪に満ちていた、それはまさに魔物を見るものと変わりがなかった。
アトレウスは殺されたが誰もその死を悲しまなかった、それどころか喜ぶ程だった。まるで魔物が退治された時の様にだ。誰もが彼の死を満面の笑顔で喜んだ。それがアトレウスの全てであった。
造反 完
2018・6・11
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