第三章
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そうしたものをまず自らが食べてからだ、アトレウスは弟に言った。
「ではそなたもな」
「はい、この料理達をですね」
「食うのだ」
こう言ってその肉料理を食べさせた、そうしてテュエステスが三つの皿に満たされていた料理をアトレウスと共に全て食べて満腹したところでだ、アトレウスは彼に問うた。
「美味かったな」
「はい、とても」
その通りだとだ、テュエステスはアトレウスに答えた。
「よい肉でした」
「自分の子は美味かったのだな」
「子!?」
「肉はこの者達だったのだ」
アトレウスは悪意に満ちた、まるで人食いの怪物の様な笑みを浮かべてだ。両手を叩くとだった。
また三皿来た、だがその皿達の上にあったのは。
テュエステスの息子達の生首だった、彼はその生首達を指さしつつ息子達の無残な姿に蒼白になっているテュエステスに言った。
「余も食ったが実に美味かったな」
「なっ、では私は」
「そうか、自分の息子は美味かったか」
その人のものとは到底思えない笑みで言うのだった。
「それはいいことだ、満足したな」
「・・・・・・・・・」
テュエステスはもう何も言えなかった、自分の息子達を食ってしまった衝撃で言葉を失っていた。そしてその場に蹲って吐いていたが。
アトレウスはその彼を見下ろしてその笑みで言った。
「そなたは自分の息子達を食ったことを生涯忘れないことだ。余の妻に産ませたあの者達の味をな」
「何ということを」
「これが人のすることか」
成り行きを見ていた誰もがアトレウスを見て唖然となった、そして誰もが顔を顰めさせた。
「確かにテュエステス様も無道」
「アトレウス様に負けないまでに」
「しかしご自身のご子息達の肉を食べさせるとは」
「それも騙して宴に招いたうえで」
「そこまでされるか」
「何という方か」
誰もがアトレウスに激しい嫌悪の感情を抱いた、それは宴にいた者達だけでなくギリシアでこの話を聞いた誰もがそうなった、それは神々も同じで。
ゼウスはオリンポスの神々にこう言った。
「デルフォイの神託以外ではだ」
「最早ですね」
「アトレウスは」
「そうだ、決して助けるな」
こう言ってだ、彼を相手にしないことにした。アトレウスは神からの恩恵を受けられなくなったがそれでもだった。
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