第二章
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「テュエステスと寝たな」
「はい、それでなのですか」
「王はあの方々を殺させたのですか」
「だからこそ」
「そうだ、あ奴は余の妻に手を出し黄金の羊の毛を渡そうとした」
ゼウスが自分のものとしてくれたその毛皮をというのだ。
「そのうえで余の妻に自身の子を産ませたのだ、それも三人もな」
「だからですか」
「お三方を殺させたのですか」
「それだけではない、あの者達の骸を使ってだ」
テュエステスが自分の妻に産ませた彼等の肉を使ってというのだ。
「さらに行う、ではよいな」
「あの、王よ」
家臣の一人が流石にアトレウスに言った。
「殺されたのですから」
「もうか」
「はい、お止めになっては」
ここでというのだ。
「そうされては」
「何を言うか、これで終わらせるものか」
アトレウスはここでも酷薄な笑みを浮かべていた、そうして言うのだった。
「余は王になった、だからだ」
「ここはですか」
「あ奴も同じことをする筈だ」
だからだと言うのだった。
「あ奴は余の妻を寝取り子を産ませてだ」
「そこからさらに金羊の毛まで狙った」
「即ち王位まで狙ったのだ」
そうした男だからだというのだ。
「こうした筈だ、だからだ」
「王もですか」
「そうしてやるのだ、では今宵宴を開くが」
「その宴にですね」
「あ奴を呼べ、和解がしたいと伝えよ」
こうしてだった、テュエステスが自身の妻との間にもうけた三人の子達を殺したアトレウスはそのテュエステスを宴に呼んだ、そしてだった。
警戒し側近達に自分を護らせている彼ににこやかに笑って言った。
「よく来てくれた、そなたとは色々あったが」
「はい」
テュエステスは自分によく似た顔の兄のその顔を見つつ応えた、これまでのことから兄の性格をよく知っているが故に警戒の念は解いていない。
「それをですね」
「終わりにしたい、それでだ」
「それ故にですか」
「これからそなたにあるものを食べてもらいたいのだ」
「料理ですか」
「よい肉が手に入ったのだ」
アトレウスは弟に玉座から話した。
「だからだ」
「その肉を使った料理をですか」
「食べてくれるか」
「テュエステス様」
彼の側近達はアトレウスの言葉を聞き主にすぐに言った。
「この度は」
「ははは、余も食べる」
その料理をとだ、アトレウスは言った。
「同じ料理をな、ではわかるな」
「左様ですか」
「毒なぞ入ってはおらん」
自らこのことを言った。
「安心してよいぞ」
「それでは」
「うむ、共にその馳走を食べようぞ」
こう言ってだった、アトレウスはテュエステスの前にその料理を出してきた。火で炙った肉や煮た肉であった。全部で三皿あった。
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