第三章
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「いい、それでだ」
「黄金の林檎もですね」
「いいですね」
「それも」
「結局老いるのだろう、私も」
オクタヴィアヌスは達観もしていた、若返りの妙薬や神々の食物は欲しいと思っていたがそれは結局手に入らないとだ。
それでだ、こう言うのだった。
「ならば像だけでもな」
「若いままにしておきたい」
「そうお考えですか」
「国中の像達を」
「そうしたい」
まさにというのだ。
「私自身が老いてもな」
「像はですね」
「若いままでありたい」
「そうお考えですね」
「それでだ」
国中に置かせている自分の像はというのだ。
「あの姿にしている」
「確かプリンキケプスがお若い頃で」
「三十代半ばですね」
「その頃のお姿ですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そうしている、このことはな」
「これからもですね」
「そうしていきます」
こう言ってだ、そしてだった。
オクタヴィアヌスは公の場では若く見える様に化粧をして出て像は若いままにしていた。そうしてでだった。
周りに若い頃のままでいる様に思われていた、そしてこのイメージは彼が死んでからも続いていて。
二十一世紀になってだ、ローマでオクタヴィアヌスの像を見て多くの者達がこんなことを言っていた。
「オクタヴィアヌスって美男子だったんだな」
「ただ皇帝になっただけじゃないな」
「美男子の英雄ね」
「余計にいいわね」
彼への好印象になっていた、そうしてこのことがだ。
彼へのいい印象になっていた、彼の死後長く経ってもこのことは続いていた。そしてオクタヴィアヌスは天国でその状況を見て笑っていた。
「まことにいいことだ」
「亡くなられてもお顔のことをよく言われることは」
「やはり顔のことはな」
どうしてもとだ、死んでからも共にいる部下に言うのだった。
「よく思われていないからな」
「だからですね」
「そうだ、今もそう思われているならな」
それならというのだ。
「実にいい」
「では若い頃の像を多く建てられたことは」
「実にいい」
「そうですか、では」
「満足だ」
こう言ってだ、彼は笑顔でいた。自分の死後も人々のイメージが若々しい美男子であることに対して。
真の姿 完
2018・8.・13
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