第四章
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「病気持ってる人もおるやろ」
「ああ、おるね」
「昔は梅毒とか治らんかったんやぞ」
祖父は愛衣にこの事実も言ってきた。
「攫ってきた人が梅毒持ってたらどうなる」
「それはもう」
愛衣にもよくわかった、吉原でもそうした話があったからだ。
「部隊全部に梅毒流行って」
「えらいことになるな」
「もうとんでもないことになるわ」
「ゴムあったわ、けれどや」
祖父はあえて生々しい話をした、その方がわかりやすいと思ってあえてそうして言ってみせたのだ。
「梅毒とか淋病持ってたら大変やろ」
「素人さんが」
「そやからちゃんと検査してるプロを集めるんや」
「業者さんからやね」
「そうや、昔で言う花魁をな」
吉原で言う彼女達をというのだ。
「そうしてたんや、江戸時代は吉原も梅毒あったけれどな」
「当時はちゃんと検査してたから」
「素人さんよりずっと安心やしな、あと商売や」
「商売?」
「そうや、娼婦は言うなら風俗嬢やろ」
ここでもあえてわかりやすく言う祖父だった。
「商売やろ」
「あっ、確かに」
「ちゃんと金払ってたんや」
客である軍人達もというのだ。
「そもそも人集めるにも作戦や、軍隊動かすんやぞ」
「自衛隊動くのも色々命令とか必要やね」
「誰が命令して書類書いたか」
「そこまで調べんとあかんのやね」
「そや、わしは兵隊やがそんな話聞いたことないわ」
軍にいたがというのだ。
「一切な」
「ほな慰安婦の話は」
「慰安婦はおった、しかし御前が通ってる大学のえらい教授さんが言うてることはな」
そうしたことはというのだ。
「一切なかったわ、あそこの女の人達だけ攫ってそうさせたとかな」
「ないんやね」
「当時あそこは日本やったし日本人の慰安婦もおったわ」
「あっ、商売で当時合法やから」
「それでや」
まさにそれが理由でというのだ。
「ちゃんとおったわ」
「そやねんね」
「そうしたこと一切わからんか調べんでな」
「言うたりしたらあかんね」
「学者やったら余計にやろ」
「ほんまに」
「その先生がどんだけ勉強出来るか知らんが」
それでもというのだ。
「そういうことせんでほんまに学舎か」
「そう言われたら」
愛衣も返答に窮した、後は祖父に勧められてたこ焼きを一緒に食べてお茶を飲んだ、そしてその後でだ。
家に帰って父にこのことを話すと彼は娘にそれ見たことかという顔になってそのうえでこう言った。
「わしの言った通りやったやろ」
「そやったわ」
愛衣もこう返した。
「ほんまにな」
「そやろ、事実としておかしいんや」
「人攫って慰安婦にしてたとか」
「当時のことをちょっと考えて調べたらな」
それでというのだ。
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