第二章
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彼の部下の中でも一番のベテランで彼が工場に来るまでは本社で一緒に仕事をしたこともあり馴染みの関係と言っていい羽柴紀洋が彼にこう声をかけた。細い目と太めの顔立ちに一八〇程の背にがっしりとした身体が印象的だ。
「あのチーフ、今日のお昼よかったら」
「昼にか」
「一緒に牛丼食いに行きません?」
こう提案したのだった。
「そうするか」
「そうだな、じゃあ弁当食う前にな」
気付かないうちに自分から異変に言及した一樹だった、自分のそれに。
「行くか」
「そうしてですね」
「牛丼食ってからな」
「お弁当もですね」
「食うか」
「はい、それじゃあ」
「行くか」
「そうしましょう」
こう話してだ、紀洋は一樹とこの日の昼工場から車ですぐの牛丼屋八条グループのチェーン店である八条牛丼に行った。そこで彼は特盛に卵と味噌汁を頼んだが一樹も同じだった。
そのことにこれから弁当も食うのにかと思いつつだ、彼は馴染みの上司カウンターの横にいる彼に尋ねた。
「あの、いいですか?」
「何だ」
「はい、チーフ最近かなり食べてますよね」
「牛丼食ってな」
「それで帰ったらですよね」
「弁当も食うさ、うちの奴が作ってくれたな」
「そうですよね」
紀洋もこのことは察しがついていたので特に思わなかった。
だがそれでもだ、一樹にこれまでのことでさらに問うたのだった。
「それはわかりますけれど俺達今から牛丼食いますよ」
「そうだな」
「それはどうなんですか?」
「食わないとやっていけないんだよ」
一樹は紀洋の言葉にこう返した。
「お医者さんにももっと食えって言われてな」
「今そんなに食べられているんですか」
「夜も食う量倍になったよ」
「倍ですか」
「運動量が増えてな」
「あの、チーフ毎日お仕事の後ジムで汗流されてますけれど」
工場のそれはとだ、紀洋は話した。
「それじゃないですよね」
「俺結婚しただろ」
「ひょっとして」
「うちの奴凄いんだよ」
一樹は小声だが困った表情ははっきり出して紀洋に話した。
「もう毎晩何度も何度もな」
「それで、ですか」
「体力の消耗が激しくなってな」
「夜の分ですか」
「工場で力仕事だしな」
このこともあってというのだ。
「運動はしないと筋肉とかが落ちるし」
「やっぱり運動はしないと駄目ですね」
紀洋もこのことはよくわかった、彼にしろジムで汗をかいているが健康の為である。
「それはわかりますけれど」
「毎晩うちのと、だからな。あっちは二十三歳でこっちは四十歳だぞ」
「体力の違いありますよね」
「本当に凄くてな、だからな」
「それだけ食べてですか」
「夜も食う量増えたよ」
昼、つまり今だけでなくというのだ。
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