第一章
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子供を生んだフライパン
昔マダガスカルにアブヌワズという詩人がいた、顔の下半分は濃く長い黒髭で覆われていて髪の毛も長く縮れていた。その目には深い知性が宿っており眉は太くしっかりとしている。背は高く背筋はしっかりしていていつもムスリムらしく露出のない服を着ている。
その彼がある日だ、隣の家に住んでいる男に言った。
「フライパンを一つ貸して欲しいのですが」
「フライパンをかい」
「はい、それを」
こう言うのだった。
「そうして欲しいのですが」
「あんた今家にフライパンがないのかい」
「はい、今は」
「今はかい」
「そうです、ですから」
「俺に貸して欲しいんだな」
「三日でいいでしょうか」
「ああ、いいよ」
隣の家の男はアブヌワズに明るく笑って答えた。
「うちにはフライパンは他にもあるしな」
「では」
「ああ、じゃあ今から渡すな」
「有り難うございます」
こうしてだった、アブヌワズは男からフライパンを借りた。そしてその三日後だった。
アブヌワズは男の家に行ってフライパンを手渡した、だが男は彼が二つのフライパンそれも大小持っているのを見て困惑して言った。
「何で二つあるんだい?」
「はい、実はです」
アブヌワズは男の問いにこう答えた。
「フライパンが子供を生んだのです」
「フライパンが子供を!?」
「はい、そうなのです」
こう男に言うのだった、それも平然として。
「それでなのです」
「わしに二つ渡してくれるのか」
「そうです、何しろこのフライパンはです」
その小さいフライパンを見つつだ、アブヌワズは男さらに話した。
「貴方が貸してくれたフライパンの子供ですから」
「だからどちらもか」
「貴方のものになりますので」
「わしにどちらも渡してくれるか」
「そうさせてもらいます」
「何か訳のわからない話だな」
フライパンが子供を生むとはだ、男はこのことに何がどうなのかとわからなかった。それでこう言ったのだった。
「嘘の様な空想な様な」
「ですが貴方は二つのフライパンが手に入るのですよ」
「悪い話じゃないか」
「そう思いますがどうでしょうか」
「それもそうか」
男も悪い話ではないと思い頷いた、それでだった。
男はこの時はフライパンが増えたと喜んだ、だがそれから暫くしてだった。
アブヌワズはまたフライパンを借りた、今度は一つでまたしても三日経ったら返すと言ったがこの時だった。
まさかと思ってだ、彼はアブヌワズに尋ねた。
「まさかまた増えるとかな」
「フライパンがですね」
「そんなことはないよな」
「ははは、どうでしょうか」
アブヌワズは答えず笑って応えるだけだった、そして。
三日経ったがアブヌワズはフラ
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