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ユア・ブラッド・マイン -フロックスの贈り物-
フロックスの贈り物
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観を口にする。それは戦場という、「死」が余りにも近い場所に身を置き続けてきたが故の価値観なのかもしれない。
「そうだな」
 だから、真一も特に反論はしなかった。
「というか、ゴネたらいつまで経っても埒があかねぇし」
「じゃ、けってーい」
 相変わらずもしゃもしゃとレタスを頬張る毛玉改めドリーを、楓花が抱き上げる。
「これからよろしくねー、ドリー」
 角の付け根をそうっと撫でる楓花の指がくすぐったかったのか。ドリーは頭を小さく振りかぶりながら応えるように小さく鳴いた。



 こうして、二人と一匹の奇妙な共同生活が始まった。
 ドリーは野菜をよく好んで食べる。牧草などの方が良いのかと思ったが、別にそういうことはないらしい。ここら辺が、やはり普通の羊とは違う存在なのだろう。
「そこら辺の雑草で良いのは助かるな」
 ドリーが来てから早くも二週間が過ぎようとしていた。交番に通ってはいるものの、やはりというか持ち主の名乗りは特にないらしい。
 一方の毛玉生物ドリーはと言えば、我が物顔で部屋を徘徊したり鳴いてみせたり布団に入ってきたりと、ちゃっかりこの家のマスコットの地位を確立していた。
「うむ、コスパが良いってヤツだね」
 羊飼育のパフォーマンスとはなんなのか。食うのか。やはり食うつもりなのか。
 喉までそんな突っ込みが出掛かったが、真一は無理矢理飲み込んだ。
「そういえばここ最近街路樹が傷つけられる事件が起きてるってねー。枝が折られたり皮が剥がれたり」
 ドリーに草を食べさせながら、思い出したように楓花が言う。
「悪戯か?」
「だとしたらアクシツ。知ってる? ここら辺の街路樹に何が使われてるか」
「いや」
「夾竹桃」
 素直に首を振ると、楓花が溜息交じりに教えてくれた。
「大気汚染や乾燥に強い園芸植物だから、街路樹には打って付けなんだけど、ちょっと問題があってね。すっごい強い上に残る毒があるの」
「それは……まあ、よくそんなおっそろしいもん植えるつもりになったな」
 思わず唖然と呟くと、楓花はふるふると首を横に振った。
「万が一、私たちが負けて本土決戦になったときに、即席の武器としてね」
「……」
 今度こそ、真一は絶句した。
 都市部での生活自体は、安全だ。鉄脈術が戦争を変えたと言うことも大きいが、市民が武器を手に命を投げ出さなくてはいけないような空気はない。
 忘れていた。自分たちがしていることは、一歩間違えばそんな最悪の状況を作り出してしまいかねないのだ。
「負けられないね」
「……ああ」
 返り血を浴びるのは自分たちだけで十分だ。
 決意を新たにしてからそれほど断たぬうちに、暗音から新しい連絡があった。
『仕事だぞ、お前たち』
 開口一番、そう告げた彼女が続けて口にしたのは、真一と
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