フロックスの贈り物
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にとって無価値なんだよ』
「まっ――」
プツン、と。
あまりにもあっけなく、最後の命綱が途絶えた。
ゆらりと、少年が一歩踏み出す。
「いやだ……」
扉の隙間から、青白く輝く月が覗いている。
「いやだぁぁぁああああああああああああああああ!!」
断末魔の直後、倉庫の宙にバスケットボール大の首が跳んだ。
†
「よくやったな」
あらましを報告すると、短いねぎらいの言葉が返ってきた。
目の前には、白銀の髪と瞳を持った十四歳ばかりの女がブランドものの椅子へと偉そうにふんぞり帰っている。
彼女こそが、黒崎暗音。現在はこの日本皇国を夷狄から護るべく、鉄脈術という刃を手に取った義勇軍・〇世代の業務統括などを担っているのでまあ実際に偉いのだが。
「さっさと報酬を寄越せ」
彼女の前に立つ少年が、ぶっきらぼうにそう応える。軽鎧と軍服の少年だった。名前を、高辻真一という。
そして、この部屋にはもう一人。
「ダメだよ、真一。暗音さんは偉い人なんだから、礼儀正しくしないと!」
少年を諫めるように口を開くのは、彼の隣に立っていた少女だった。こちらも外見は十四程度。和服と軍服、そして学生服をミックスしたような珍しい出で立ちだ。
「っせーな、楓花。いんだよ、こんなうさんくせぇバァさん」
少女の名前は七泉楓花。
真一と楓花は、いわゆる製鉄師と魔女だった。先刻みっともなく泣き喚いていた男の首を断った刀こそが、彼らの鉄脈術だ。
「七泉はしっかりしているなぁところで高辻苦悩の梨って知ってるか?」
暗音が洋梨のような形の器具を取り出した辺りで真一は慌てて土下座に移行した。この女、やると言えば本気でやりかねない。
幸い、気乗りしなかったのか暗音は大人しくその装置をしまうと、入れ違いに茶封筒を投げる。キャッチした楓花が中身を見ると、なんだか偉そうなじいさんが描かれた紙が十枚ばかり顔を出す。言うまでもなく札束である。
「相場より安くない?」
「ネズミ駆除だと言っただろう。そんなにぽこじゃか渡せるか」
楓花の訴えを暗音は一蹴した。
「もっと欲しかったら追加任務でも受けるか?」
「追加……?」
土下座から立ち上がった真一が、訝しげな声を上げる。
普通の常備軍とは違い、〇世代は俸給制を取っていない。提示された任務を受注し、戦果報告を行なうことで見合った報酬額が支払われるというシステムだ。楓花は「RPGのクエストみたい」などと言って笑っていたが、真一はゲームの類いをやったことがないのでよく分からない。
ともあれ、そういうシステムのせいで任務は基本的に奪い合いだ。運悪く任務が受けられない日が続くようなペアには必需品が現物支給されることもあるが、それだって最低級の任務を一つ受ければまるごと
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