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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 13
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ててーっと数歩分進んだ所でくるりと振り返ったミネットが、両腕をぶんぶん振り回して叫ぶ。
 「あのね、ぷりしらさまのおてがみにかいてあったおまどね、いわれたとおりにあけておいたよ! えっとぉー……みぎがわのぉ、いちばんはじっこのぉ……、あのおへやでいいんだよね?」
 建物に背を向けたまま、少女の左手の人差し指が件の場所を指し示す。
 プリシラが確認しようとそちらへ視線を移しても、漆黒の空に浮かぶ星月と、建物内部から微かに洩れている燭台の灯りと、敷地境の一歩内側でゆらゆら揺れる松明の灯りだけが、暗闇に溶け込んだ建物の輪郭をぼんやりと照らし出している状態。ぱっと見では具体的に何処で何がどうなっているのか判りそうもない。
 だが、少女に向き直ったプリシラは
 「あのお部屋で合ってるわ。ありがとうね、ミネット」
 あたかも総てが見えているかのように頷き、お礼の意味も込めて軽く右手を振った。
 「はーい!」
 自分は間違ってなかった、言い付けをしっかり守れたと、幼い両手を掲げて嬉しそうに走って行くミネット。

 斯くして追撃の矢は放たれた。マイクの悲痛な叫びが再び響き渡るまで、そう長い時間は掛かるまい。
 その場に居た身に覚えがある者達は全員、犠牲者(マイク)へ向けてそっと祈りを捧げ、自分自身にも改めて強く誓う。

 手出し可・不可の見極め大切、反省大事。
 学ぼう、処世術。
 身に付けよう、謙虚な精神(ココロ)
 総ては悪魔の暴虐(おしおき)を避ける為に。
 
 天を仰ぎ、虚空を見つめ、地を這う、悟りと虚無が入り混じった無数の瞳。
 しかし、悪魔は我一切関せずとふんわり目を細め、腰に抱き着いたままの少年の頭を優しく撫でる。
 「私達も招き入れてくれる? キース」
 「ん……っ! み、まっ……!」
 途端に顔を綻ばせ、プリシラの左手首を掴んでグイグイと引っ張りだすキース。
 『みんな、まってたんだよ!』
 言葉としては未完成な歓迎の響きを、けれどプリシラは正確に受け止め
 「……ふふ、ありがとう。よろしくね」
 出迎えてくれた孤児達全員へ、心の底から溢れたような喜色満面の笑みと感謝の言葉を贈り返した。


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