暁 〜小説投稿サイト〜
魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第2話 被検体
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さっさと仕事に戻りやがれクソが。昨日だって仕事終わらずに徹夜してやがった馬鹿が何言ってんだい」
「うるさい私のミジンコ以下の優しさを使ったのに邪魔しないで!!」
「へいへい、悪かった悪かった」
扉が開き、ひょこっと翁が顔を出す。一発殴ってやりたいのだが、その怒りは後で上手く処理しよう。
横を向くと、案の定レンが心配した様な表情で、私の顔を覗き込んでいるが、この際どうでもいい。
今はただ、レンが生きられるのならば、何でも良い。
「……まぁ一応、お前さんも、無理はすんなよ。打っ倒れられたら、流石に俺一人じゃ看病できないかんな」
翁が溜息混じりの声を出す。どうやら、私の真剣な表情を見て、折れた様だ。
と言うか、翁一人で看病できない? それは「お前はクソ面倒くせぇんだよ」と言ってるようなものじゃぁないか。そろそろ一発殴ってやろうかな。
だが、その怒りは一つの言葉に因って一瞬の内に消し去られた。
「大丈夫だ。此奴が倒れたら、今度は俺が看病する」
翁も、恐らく私も、目を一杯に見開いて、レンを見詰める。レンが不思議そうな顔をするが、其れに負けないくらい不思議そうな表情を、数秒遅れて翁が浮かべる。
「……何か、おかしいこと言ったか?」
「「………………………………言ってない」」
九〇四番には絶対に惚れない自信があるけど、レンだったら一無量大数分の一くらいの確率で惚れるかもしれない。
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