暁 〜小説投稿サイト〜
魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第1話 第一魔法刑務所
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りも早く、顔を床にめり込ませていた囚人は床から顔を抜き、此方を見る。だが、額や鼻から、だらだらと血を流しているため、物凄く気持ち悪い。こっち見るな、笑っちゃうじゃん。
「だから酷いって!? そんなキツイ事言ってると、男達逃げちゃうよー!? 折角可愛いんだし、もーちょっと優しくしても良いんじゃないかなぁ!? まぁ、邪魔な虫が寄ってこなくて、楽で良いけどね!」
「誰がてめぇなんかに靡くかボケ! それに自惚れるな気持ち悪い」
黒髪の蓬髪に、金色の猫目。黒い半袖シャツに、白いベスト、黒いスラックスと言う、刑務所に相応しくない恰好をしているのが、囚人番号九〇四番。周りからは"グレース"と呼ばれて居る様だ。が、呼ぶ気にはならない。顔は血塗れだし、かなりの女好きだし、囚人だし。なんなのほんとに、女性に会えば直ぐに口説きに行くとか、もう頭イッちゃってんじゃないの。
「ねーねー、グレースくんって変態だよね? あーゆーのが、変態ってヤツだよね」
「ん? そうだけど? 馬鹿で阿呆で変態で社会不適合者で人間として失格な最早人間でもないただのクソだけど?」
「ええええぇぇぇえ!? 琴葉ちゃん、何吹きこんでんの!? てか人間じゃないってどゆこと!?!?」
白い肩まで伸ばした髪に、睫毛が長い女子の様な赤い瞳。服装は黒い、無地のツナギと言う囚人らしい服装。チャックを首を隠すまで閉めているため、一見女子なのだが、実際は男であるのが囚人番号八九番。通称"ハク"。此方も呼んだことは無いし、呼ぶ予定も無い。と言うか、九〇四番が退いて一番上になったが、退かずに下にあと二人囚人が居る状態で喋っているのを見るともう笑いが堪えないんですけどさっさと其処を退けと言うかそもそも真顔で言うな笑うだろ。
「おい看守。さっさと僕を図書室に連れて行け」
「嫌ですがなにか? 連れて行って欲しいんだったらもっと真剣に頼んでくれないかなぁ、んん? 別に、土下座して『お願いします主任看守様、僕を図書室へ連れて行って下さい。何でもします』って言っても良いんだよぉ? えぇ?」
後ろで細く束ねられた深い青の髪に、エメラルドの瞳。白いカッターシャツに、紺色のベスト、宝石が埋め込まれたループタイに、黒いスラックス。そして、極めつけの黒い眼鏡。何処かのお坊ちゃんを思わせる格好をしたのが、囚人番号四番。通称"シン"。呼んだ事も予定も無い。山の上から二番目で、滅茶苦茶私を睨んでくるけど、そよ風程度、いや最早何も感じないし。
此処までは普通に、クソが付く程ウザイ極悪脱獄囚で、自分の中で整理を付ける事が出来なくもないのだが―――
「……"レン"」
「…………なんだよ」
黒に赤いグラデーションが掛かった髪に、グレーの瞳。ボロボロの囚人服を着た彼だけは、囚人では無い。
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