1st season
11th night
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ゆっくりと駆け上がり、本線に身を踊らせる。落ち着いた、悪くいえばこの世界では地味な、純正色のシルバーが描き出すライン。C1で振り回すには明らかに大きく不釣り合いな車体。それをひらりと舞うように制御し、狭いC1を駆け抜けていく。
コーナーに差し掛かれば丁寧なブレーキングで減速。アウト側の車線から鼻先をインに向け、僅かにリアを滑らせる。向きを変えつつコーナーをクリアし、先の短い直線へ飛び出していく。最低限の減速、自由自在なステアリング捌き。 「動きがダルい」とされる33Rだが、そんな事を微塵も感じさせずにこのRは舞う。
そんなRの後ろから、NSX−Rが追い上げてきた。新しいチューニングを施されたグレーラビットの駆るマシンは雰囲気猛々しくRに仕掛けようとする。
「この辺じゃ珍しい33R……新しいコイツで試してやる……」
威圧感を隠さずRの後ろに付きパッシング。バトルの合図。ギアを落として加速体勢を作るNSX−R。しかし───
「…………は?」
Rはコーナーを抜けると左ウインカーを点灯。速度を下げない程度にブレーキランプを点け、NSXを前に出した。
「……肩透かしか……」
急速に興味を失ったグレーラビットは気だるく加速。すぐにRからは見えなくなった。
「悪いね、今日は休みなんだ」
Rのドライバーは呟いて、マイペースでの周回を繰り返す。幾つかの本気で攻めていくマシン達が彼を追い抜き、幾多の雰囲気組が彼に置き去りにされる。闘志は無く、ただひたすらにスムーズな走りがそこにはあった。
数刻後、芝浦PA。目覚めた時のように静かに停められたRから出てきたのは、R4A所属の柴崎だった。
「…………」
思慮深げに33Rを眺め、リアピラー付近をあやす様に軽く叩く。リアウインドウでR4Aの文字が真紅に光った。もっとも、小さ過ぎて直ぐには見分けのつかないレベルではあったが。そして煙草に火をつけて一息。紫煙が朝暮れの空に登っていく。
そのRを見て1人の青年が歩み寄ってきた。軽く会釈し、柴崎と並び立つ。
「おはようございます柴崎さん。やっぱりここに居ましたね」
「おはようございます、やっぱりって事は誰かから聞き付けたんですか?」
柴崎に話しかけたのはC1で鳴らしているチーム[Fine Racing]のリーダー、流離いの天使と呼ばれている青年だ。
「ええ、ウチの若いのが何人か銀の33Rに置いていかれたと言っていたので。C1で33Rを振り回してる人なんてそう多くは無いですから」
「確かに。あまりコイツで有名になるつもりは無いんですがね」
苦笑しつつ柴崎は天使の車を眺めた。白銀のアコードCL7。C1ではかなり定評を得ている現役ランナー
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