1st season
11th night
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の性質上、路面は荒れに荒れ、ギャップもひどい。更には狭いコース幅の中に様々なペースの車が入り乱れ、モータースポーツとしては非常に走りづらいコースと言える。マシンの限界を常に引き出して走ることを信条とする「電光の疾風」とRX−8にとっては、到底相性の良い場所とは言えず、むしろフラストレーションの溜まるステージと言えた。
ではなぜ今、不得意なステージで『Dの遺産』をこれほどまでに追うようになったのか。
「やっぱり、あの人の影響だよナ……」
その出会いは今から数年前へとさかのぼる。当時、中古車のブローカーまがいの事を始めたばかりの彼は1台の中古のRX−8に出会う。それまでにも仕事で何台もの車を乗ってきていた彼であったが、初めて乗ったロータリーエンジンには衝撃を受けた。ロータリーならではの軽やかな回転感、高音域を奏でる独特なエキゾーストサウンド。理屈を抜きに心へと刺さるものがあった。
速さで言えばもっと速い車もある。通常のレシプロエンジンに比べれば手間もかかるしチューニングの伸びしろも少ない。だが、走るならばこれしかない。そう思わせる何かを彼は感じたのだ。そこからどっぷりと走りの世界へと嵌っていった彼は、ある走行会で真紅のFD3Sに乗る一人の男と出会う。
初めて交わした会話は彼自身よく覚えていないが、その男がまとっていた雰囲気が今まで出会ってきた他者とは何か違うものであったことだけは鮮明に覚えている。プライベーターとしてロータリーマシンをいじっているというその男は、当時まだ駆け出しだった彼に対し、チューニング面だけでなくドライビング面でもことあるごとに様々な助言を与えた。
普段ならばあまり他人からの助言を聞こうとしないのだが、なぜかこの男の言葉には反抗する気も起きず素直に聞き入れる事が出来た。その結果、見る見るうちにマシンもドライバーである彼自身もレベルアップを果たし、「雷光の疾風」と呼ばれるまでになったのだった。
そんな中突然浮上した、Dの遺産復活の噂。
彼がそのことについて問いただしてみても、あの男は答えを濁すばかりだ。だが、たとえ明確な答えがなかろうとあの男が『Dの遺産』について何か関係があるのはまず間違いない。あの男が何も語らないということはつまりまだ、今の自分の手にあまる話だということなのだろう。
冗談ではない。
「雷光の疾風」は心の中で毒づく。自分などまだお話にならないというのならば、自らの力で真相まで追いつき、見返すまでだ。
「遅い奴にはドラマは追えない、てナ――」
彼はひとり呟くと、今夜もまた首都高へと上がるのであった。
また別の日、C1内回り、芝浦PA。
1台のRが目を覚ます。BCNR33型スカイラインGT−R。ループを
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