主役だと言い張れる話 後編
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かったんだ。
痛めつけられるリーダーを見て、女性陣は悲鳴をあげ、戦士の男は罵倒の言葉を盗賊に投げつけていた。俺は、というと、死に方に納得がいってなかった。どこかで死ぬだろうとは思っていたけど、こういった死に方だとは思ってなかった。
さて、どうなったか。もちろん、彼は考えなしじゃなかった。
盗賊が彼の喉を掻き切ろうとした瞬間、何人もの男たちがその場になだれ込んできた。村に住んでいた人々だった。その手には農具やら何やら、多少は武器になりそうなものを各々が持っていた。
それが、彼の策だった──というのも、正確には違った。ここが、俺のようなダメ人間との違いだった。
リーダーの相手にかかりきりだった盗賊団は対処が遅れ、人数という物量に圧倒された。村人たちが乱入してくれたおかげで俺たちは助かり、彼らと協力することで盗賊団を倒すことに成功した。
村に戻った俺たちは村人たちにとても感謝された。リーダーは彼らに対して「あなたたちが勇気を出してくれたおかげです」と答えた。
後から話を聞いたところ、彼は盗賊団のアジトから逃げ出した後、村に戻ってこう言ったらしい。
『これから自分は仲間を助けに行く。ただ、恐らく自分は死ぬだろう。そうなってしまったら、この村はあなたたちが守るしかない。どうか、勇気をもってほしい』
俺は、彼が何か考えてから俺たちを助けに来ると思っていた。けど、ある意味でそれは彼のことを理解していなかった。
彼は、リーダーはかなり優秀な男だった。けど、何でもできるってわけじゃない。言ってしまえば俺たちは、彼なら助けてくれると楽観視していたけれど、実際は絶体絶命の状況だったわけだ。そのことに、彼だけは気づいていた。
だから、決死の覚悟で俺たちの元に来た──信じられるかい? 死ぬと分かっていて俺たちのところに来たんだ。俺が、彼が俺たちを助けに来る、ということに疑いを持たなかったのは、俺でもそうするからだ。いくらなんでも、俺だって仲間を見殺しにはしない。
でも、それは自分が仲間を助けられると確信があるときだけだ。もしも自分が死ぬことが明らかなら、俺は助けに行ったりはしないだろう。だって、自分が死んじゃうからね。
彼はそうじゃなかった。本当の意味で、仲間を見殺しにできなかった。それどころか、自分が死んだ後の村を心配さえした。
そして結果として、その行動が俺たちを助けることになった。
その後、村では自衛手段が模索され、同じような状況に陥っても自分たちで守れる体制を作ることになった。村人曰く、無関係の村を助けるために命を懸ける姿を見て何もせずにはいられなかった、らしい。
リーダーの命がけの行動が、全てを良い方向に進めた、ってわけさ。よくやるな、と感心したもんだよ。
似たような話は他にいくらでもある。けど、一つ言えば十
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ