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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 12
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ろん。お二人で楽しめる物をご用意いたします」

 顔色一つ変えず、にこやかに即答した。

「へ? あ……お気遣い、ありがとうございます?」
「どういたしまして」

 ベルヘンス卿とも面識があったミートリッテは、彼の印象がどこか以前と違う気がして、つい戸惑い気味に応えてしまったが。
 ベルヘンス卿は気分を害した様子もなく、静かな微笑みを浮かべている。
 ミートリッテの記憶に残る彼は若干慌ただしい性格だった気がするのに。
 視線をさ迷わせている今のミートリッテのほうが、よほど挙動不審だ。

 細めた目でミートリッテを見つめる二人の男性。
 プリシラはゆっくりと目蓋を下ろし……そっと開いた。
 表出したのは、我が子の成長を見守る母親のような、優しい微笑み。

「では。早速で申し訳ないのですが、殿下は会議室にてミートリッテと共に私の代理を。ベルヘンス卿は孤児院への同行を。よろしくお願いします」
「「お任せを」」

 姿勢を正した第三王子と護衛騎士に悠然と頷き。
 二人の男性に挟まれた次期大司教が、扉を開いて廊下へと歩み出る。
 一番最後に執務室を出て鍵を掛けたミートリッテは、三人の背中を視界に収めたまま、内心で首を傾げた。
 プリシラの反応が、これまでに見てきたどれにも当て嵌まらないからだ。

 ちなみに、ミートリッテは『生贄』以外の判定を見た(ためし)がない。
 澄ました顔で先を行くプリシラが、ベルヘンス卿をどう判断したのか。
 いつもはなかなか本心を覗かせてくれない女悪魔の頭の中を、少しだけ、お伝えしよう。
 プリシラは、ベルヘンス卿とセーウル王子の意味ありげな眼差しを。
 そしてミートリッテの戸惑い顕著な反応を観察し、こう感じ取っていた。

絶対不憫(むくわれない)

 と。



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